受賞者特集


第1回毎日地球未来賞 NPO法人「印旛野菜いかだの会」

毎日新聞創刊140年を記念して創設され、「食料」「水」「環境」分野の問題解決に取り組む個人・団体を顕彰する「第1回毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催、内閣府など後援、クボタ協賛)に千葉県佐倉市のNPO法人「印旛(いんば)野菜いかだの会」が選ばれ、このほど大阪市内で表彰された。クボタ賞に輝いたNPO法人「日本の森バイオマスネットワーク」(宮城県栗原市)と「緑のサヘル」(東京都千代田区)と共に、その活動内容を紹介する。【脇田顕辞】

(左から)「日本の森バイオマスネットワーク」の佐々木豊志さん、「印旛野菜いかだの会」の美島康男さん、「緑のサヘル」の岡本敏樹さん=大阪市北区のオーバルホールで2月29日、後藤由耶撮影
(左から)「日本の森バイオマスネットワーク」の佐々木豊志さん、「印旛野菜いかだの会」の美島康男さん、「緑のサヘル」の岡本敏樹さん=大阪市北区のオーバルホールで2月29日、後藤由耶撮影

毎日地球未来賞

魚が、鳥が、絶滅種が戻った–NPO法人・印旛野菜いかだの会(千葉県佐倉市)

印旛沼の再生を目指し、00年に設立された印旛野菜いかだの会は、地道な取り組みを続けて数々の成果を上げてきた。

約50年前までは泳ぐことのできた印旛沼は開発で浅瀬が失われ、排水で富栄養化が進み、夏にはアオコが大量発生していた。理事長の美島(みしま)康男さん(72)らは企業や学識者の協力を得て「植栽いかだ」を開発し、沼の脇の水路に浮かべたいかだで空心菜などを水耕栽培し、淡水真珠の母貝やシジミをつり下げた。水中の窒素やリン、有機物を吸収させるためだ。

「生物浄化システム」と名付けたこの試みの結果、水の透明度は格段に増し、アオコは消えて魚や鳥の姿が戻った。昨年はいかだ上に作った人工の浅瀬で、印旛沼では絶滅した水草を復活させることに成功した。

いかだで育てた淡水真珠を手に語る美島さん=脇田撮影
いかだで育てた淡水真珠を手に語る美島さん=脇田撮影

この技術が国内外で認められ、要請を受けてベトナムや小笠原・母島などでもいかだを浮かべている。

地元の小学生を招いて一緒に作業をしながら水の大切さを教えるなど啓発活動にも力を入れ、淡水真珠でアクセサリーを作って地域おこしにつなげる計画も進む。今年は水路ではなく初めて印旛沼にいかだを浮かべ、水質浄化の取り組みを本格化させる。

美島さんは「受賞を励みに、食料・水・環境のすべての分野でますます頑張っていきたい」と話している。

クボタ賞

被災地住宅のモデルを–日本の森バイオマスネットワーク(宮城県栗原市)

日本の森バイオマスネットワークは現在、宮城県登米(とめ)市に東日本大震災の被災者のための共同住宅を建設している。「手のひらに太陽の家」プロジェクトと名付け、福島第1原発事故によって放射線量の高い地域を短期間離れる「保養」の子どもたちを受け入れる予定で、6月には完成する。

アウトドアメーカー「モンベル」(大阪市)など多数の団体の支援を受け、被災地の住宅のモデルを目指す。木くずを圧縮した木質ペレット燃料を使うボイラーや太陽光発電を導入し、地元の木材を利用する。将来は環境教育などの拠点として活用するという。

「日本の森バイオマスネットワーク」の佐々木豊志さん
「日本の森バイオマスネットワーク」の佐々木豊志さん

震災直後には避難所に駆けつけ、寒さに震えていた被災者にペレットストーブや燃料、段ボール1000箱の支援物資を届けた理事長の佐々木豊志さん(54)は「循環する森林資源を使って被災地を元気にしたい」と話している。

住民とともに増やす緑–緑のサヘル(東京都千代田区)

緑のサヘルは91年に設立、アフリカのチャドやブルキナファソなど砂漠化の進むサヘル地域で住民と一緒に緑を増やす取り組みを続けている。

アラビア語で岸辺を意味するサヘルはかつて緑豊かだった。砂漠化は連作や農地のための森林伐採、家畜の過剰放牧など人為的要因が関与し、背景には貨幣経済の進行や人口増がある。代表理事の岡本敏樹さん(43)は「アフリカでは環境問題は生活問題。木を植えられる生活を作らなければ解決しない」と話す。

会の活動は、住民のための井戸掘りから、燃焼効率のいいかまど作りや養蜂、搾油の指導まで多彩だ。耕地に穴を掘って堆肥(たいひ)を詰めたり、石で堤を築いて表土の流出を防ぐ技術も教えてきた。植えた木は70万本以上、植林を指導した小学校は延べ137校に上る。岡本さんは「今後も住民の暮らしに密着した支援を続けたい」と話す。

地球未来賞トップへ
  • 顕彰