ひと:村上一枝さん=マリへの支援を続け、毎日地球未来賞を受賞


村上一枝(むらかみ・かずえ)さん(72)

歯科医院を開業していた約30年前、サハラ砂漠の観光旅行で西アフリカ・マリを訪れ、ショックを受けた。日本では治る病気なのに、病院がない。幼い子供を亡くした母親は「神様が連れていくんだから仕方がない」と諦めていた。何かをしたいと思ったという。

後輩に医院を譲り、89年に単身でマリへ。NGOの一員として植林や病気予防に携わった。92年にボランティア団体を設立し、東京とマリとの行き来を重ねる。これまでに農村を100カ所以上訪れ、井戸を掘り、識字教室を開き、マラリア予防に取り組んできた。その活動が評価されての受賞だ。

現地の住民をスタッフに自分は黒衣に徹する。「建物を造っても住民が補修の仕方を覚えなければ壊れてしまう。技術者や指導者を育てないと真の支援にならない」

当初、住民からは、支援活動に参加する見返りに金銭や物を求められることがあった。でも、病気予防の成果が表れることで信頼を得た。野菜園をつくり、現金収入が得られると、村の若い女性の出稼ぎが減った。

現在、マリは、イスラム過激派掃討のためフランスが軍事介入している。戦闘地域には、かつて活動していた村も含まれる。危険な状況が続く中、スタッフには受賞が何よりの励みという。「穏やかで親切な人が多い国です。一日も早くマリの人たちが平和な暮らしを取り戻せるよう、地道に支援を続けたい」<文・勝野俊一郎>

人物略歴

北海道生まれ。92年からNPO法人「カラ=西アフリカ農村自立協力会」(東京都武蔵野市)代表理事。歯科医。

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