「第4回毎日地球未来賞」 受賞4団体の活動紹介


地球規模の課題である食料・水・環境の分野で問題解決に取り組む個人や団体を対象にした「第4回毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催、内閣府など後援、クボタ協賛)に、青森県立名久井農業高校の課題研究グループ「TEAM FLORA PHOTONICS(チーム・フローラ・フォトニクス)」(青森県南部町)が選ばれた。クボタ賞のNPO法人「黒潮実感センター」(高知県大月町)とNPO法人「学生耕作隊」(山口県宇部市)、次世代応援賞の広島県立油木高校「ミツバチプロジェクト」(広島県神石高原町)と共に、2月に大阪市内で表彰された。4団体の活動を紹介する。【遠藤孝康】

毎日地球未来賞

花を守り、被災地を力づけ

青森県立名久井農業高校「TEAM FLORA PHOTONICS」(青森県南部町)

定規を使ってサクラソウの丈などを調査するチーム・フローラ・フォトニクスのメンバー=青森県八戸市の種差海岸で2012年5月(名久井農業高校提供)
定規を使ってサクラソウの丈などを調査するチーム・フローラ・フォトニクスのメンバー=青森県八戸市の種差海岸で2012年5月(名久井農業高校提供)
種差海岸で採取した種から花を咲かせたサクラソウ=名久井農業高校内の農場で2012年5月(名久井農業高校提供)
種差海岸で採取した種から花を咲かせたサクラソウ=名久井農業高校内の農場で2012年5月(名久井農業高校提供)

光の効果を活用した植物栽培について研究しようと2009年に設立された。2年後に発生した東日本大震災を受け、津波による塩害からの野草の保護や草花を使った被災者支援にも取り組む。

震災直後から、青森県八戸市の名勝地・種差(たねさし)海岸に群生する希少なサクラソウの保護に力を注ぐ。チームの調査で、津波をかぶった群生地では土壌の塩分濃度が上昇し、絶滅の危機に瀕(ひん)していることが分かった。

チームは県に状況を報告し、絶滅に備えて群生地外で種を保存しておくことを提案した。県の許可を得て種の採取に成功し、校内で保護栽培を始めた。

土壌からの除塩にも取り組んだ。マイクロバブルという気泡を含ませた水をかけると除塩効果が高まることを発見し、被災地の花壇で実践した。さらに、空気の浄化作用がある花を、室内でも咲くよう改良し、被災者が暮らす仮設住宅に設置している。

チームがサクラソウの保護に取り組んだ種差海岸は13年5月、三陸復興国立公園の一部となった。チームは、震災から4年を迎えた現在も、サクラソウの生態調査や人工授粉など、群生地の保全や活性化に取り組み続けている。

クボタ賞(2件)

人と共存する「里海」づくり

NPO法人「黒潮実感センター」(高知県大月町)

シュノーケリングの練習をして、海の体験学習に臨む子供たち(黒潮実感センター提供)
シュノーケリングの練習をして、海の体験学習に臨む子供たち(黒潮実感センター提供)

高知県の西南端にある柏島(かしわじま)が活動の舞台だ。島の周辺海域は透明度が高く、暖流の黒潮と瀬戸内海から南下してきた栄養豊富な水が交わり、1000種を超す魚類が生息する。センターは、サンゴの保護や藻場の再生を通じて豊かな環境の保全に取り組むとともに、自然の素晴らしさを実感してもらうための体験学習やエコツアーを企画する。  高知市出身で高知大や東京大海洋研究所で魚類生態学を研究してきたセンター長の神田優(まさる)さん(48)が1998年に島に移住して活動を始め、2002年、NPO法人化した。

センターが目指すのは、人と海が共存できる「里海」づくり。島の漁業者の暮らしを守るためにアオリイカの産卵床を海底に設置し、レジャー客の増加が島民の生活を脅かさないよう島での行動ルールを定めた「柏島里海憲章」の策定にも取り組む。神田さんは「人は海から恵みを受けるだけでなく、人が海を豊かに育て、守るべきだ」と話す。

自給自足、山村の再生図る

NPO法人「学生耕作隊」(山口県宇部市)

耕作放棄地を再生してブルーベリーを植えた畑で記念撮影するメンバーら=山口県宇部市で2014年6月(学生耕作隊提供)
耕作放棄地を再生してブルーベリーを植えた畑で記念撮影するメンバーら=山口県宇部市で2014年6月(学生耕作隊提供)

2002年、学生たちが農家の仕事を手助けしようとスタートさせた。設立から12年がたって農家の高齢化がさらに進む中、現在は耕作放棄された20ヘクタールの中山間地の再生に取り組み、茶や米、ブルーベリー、ミカンを栽培販売する。

20〜30代のスタッフ9人が農地の近くで暮らし、自給自足の生活を目指す。「楠クリーン村」と名付けた敷地内に自ら住居を建て、井戸から水を引き、ソーラーパネルで発電する。理事長の高田夏実さん(24)は「本当に安心して暮らすために、自立して生活できる技術を地域から学び身につけたい」と話す。村には全国から年間延べ1000人のインターンが訪れる。

4年前からはカンボジア中部の村にも42ヘクタールの畑を持ち、NPOへの寄付金で支援や交流を進める。地元で採れるカシューナッツを加工販売するとともに、楠クリーン村で栽培する茶とブレンドした商品を開発した。国境を越えて村づくりの活動を進めている。

次世代応援賞

耕作放棄地、養蜂の花畑に

広島県立油木高校「ミツバチプロジェクト」(広島県神石高原町)

巣箱を使ってミツバチを飼育する生徒たち=広島県神石高原町で2013年4月(広島県立油木高校提供)
巣箱を使ってミツバチを飼育する生徒たち=広島県神石高原町で2013年4月(広島県立油木高校提供)

ミツバチを飼ってハチミツを生産する「養蜂」で地域を活性化させようと、2010年から産業ビジネス科の生徒(現在は89人)が取り組む。

学校のある広島県神石高原町は中山間地にあり、農家の高齢化で耕作放棄地が増えた。かつて盛んだった養蜂も、安価な輸入ハチミツに押されて衰えていた。高校は、耕作放棄地を花畑として再生するとともに、ミツバチを放してハチミツの生産につなげようと計画。5年前からミツバチ5万匹の飼育を始めた。

11年には、町民から「5ヘクタールの耕作放棄地に花を植え、養蜂に利用してほしい」と依頼され、20年以上放置されていた畑を整地し、レンゲ畑に再生した。近くでは養蜂に取り組む住民が現れ、町も耕作放棄地対策としてレンゲの種の購入費を予算化するようになった。

東日本大震災の被災地支援にも取り組む。宮城県亘理町のイチゴ農家に授粉用のミツバチ15万匹を12年から毎年贈り、最近はイチゴの販売も支援している。

(2015年3月17日朝刊)

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