受賞記念講演会

<左上>NPO法人「緑の地球ネットワーク」代表・立花吉茂さん<右上>ルダシングワ(吉田)真美さん<下>講演に聴き入る参加者たち=大阪市北区の毎日新聞大阪本社オーバルホールで9月22日
 市民レベルの国際交流・協力活動を顕彰する「第17回毎日国際交流賞」(毎日新聞社主催、外務省後援、株式会社クボタ協力)の受賞記念講演会が9月22日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社オーバルホールであった。団体受賞のNPO法人「緑の地球ネットワーク」(大阪市港区)の立花吉茂代表(79)が「黄土高原の緑化協力」、個人受賞のNGO「ムリンディ・ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」日本事務所代表、ルダシングワ(吉田)真美さん(42)=神奈川県茅ケ崎市=が「出会いから始まった国づくり」と題してそれぞれ講演し、約380人が耳を傾けた。立花代表は中国・大同市の黄土高原で続ける緑化協力活動の難しさを訴え、夫ガテラさんと壇上に上がった吉田さんは、アフリカ・ルワンダでの障害者支援活動を通じて知った出会いの素晴らしさを語った。【根本毅、写真は幾島健太郎】


 ◆出会い大切にしたい--NGO「ムリンディ・ジャパン・ワンラブ・プロジェクト」日本事務所代表・ルダシングワ(吉田)真美さん

 ◇ルワンダで義足を製作、障害者の自立を支援

 このような賞を頂くことができて、うれしく思います。きっかけは小さな事でした。今、私の横にいる、ルワンダ人の男性に出会ったことから始まりました。出会いがとても大事だということをこの身で感じています。

 活動は97年、ゼロから始まりました。障害者を支援したいとルワンダ政府に話し、約1ヘクタールの土地を寄付してもらいました。何もない所で、その場の土でれんがを作ることから始めました。今では、レストランとゲストハウスの運営をしながら、一番の目的である義肢製作所を設けて活動を進めています。

 最初に来た患者さんは、セメント工場で働く男性で、車を運転していて地雷を踏み、両足を失いました。彼の足を作ることが最初の仕事になりました。

 私たちの活動を語る時に、必ず伝えなければならないことがあります。(部族の対立がもたらした)11年前の大虐殺です。元々ルワンダの人たちは仲良く暮らしていました。しかし、ドイツやベルギーの植民地となり、二つの部族に分けられました。一方を優遇し、他方をないがしろにすることが行われ、最終的に大虐殺というとても悲しい結果となりました。何の罪もなく、部族が違うというだけで殺された人たちの骨を見るたびに、この骨は誰かのお母さんだったかもしれないなと胸が切なくなります。

 そして、傷を負いながらも虐殺を生き延びた人たちがたくさんいます。私たちが支援しているのは、地雷の被害者、なたやおので手足を切り落とされた人たちなどです。

 遠くに住む人のため、02年2月から巡回診療を始めました。車に義肢製作の材料や技術者を乗せて行きます。多い時には200人ぐらいの障害者が訪れますが、まだ十分な予算がなく、渡す人を選ばなくてはいけません。一つの家庭で父親と子どもに義足が必要な場合は、父親の義足を作ることにしています。働いて一家を支えなくてはいけないからです。子どもの義足も作れたら良いと思いますが、力が足りません。ルワンダにはまだ義足を必要とする人がたくさんいます。

 私たちが大事にしていることに、障害者スポーツの普及もあります。サッカーチームのほぼ全員が、かつてまちで物ごいをしていました。生きることに前向きになってもらうため、スポーツで心のケアをしています。

 2000年のシドニー・パラリンピックで、ルワンダ初の選手が水泳に出場しました。最下位でしたが、笑ってプールから上がってきました。「負けちゃった。でも次があるさ」と話した彼の一言に、ルワンダの未来が凝縮されています。前向きな姿勢をルワンダの人たちは心の中に強く持っていると思います。

 ルワンダの男性が昨年8月から6カ月間、日本で義足を作る勉強をしました。今年も1人、来ています。彼らが技術を持ち帰り、さらに多くのルワンダ人に伝える。とても大切なことだと思います。

 ルワンダのことわざで「山と山は出会わないが、人と人は出会うことができる」といいます。これからもいろいろな人と出会って、活動を一緒に進められたらと思います。


 ◆「草の根」人の育成から--NPO法人「緑の地球ネットワーク」代表・立花吉茂さん

 ◇中国・大同で緑化協力活動、黄土高原に林を造る

 私が代表になっていますが、事務局長の高見邦雄さんが本当の草の根活動をされた方です。賞を頂くのは、高見さんの努力と、世話人や会員などの援助のおかげと思っています。

 黄土高原の土は世界で一番細かい。何十メートルも積もっているところもあれば、数メートルのところもある。それが冬に凍結し、春先に少し溶け、表面が黄砂という形で日本まで飛んできます。

 代表になる前、高見さんに誘われ、軽い気持ちで大同に行きました。土地の人が松の苗を植えるのを見て、「これはあかんわ」と思った。貴重な水がなくなったらいけないと、植えた苗の上から足で踏みつけてしまうんです。乾いたられんがのようになり、間違いなく枯れます。踏まないように言うと、反対される。毛沢東語録に書いてあると言うんですね。これにはびっくりした。それで、高見さんは「踏め。ただし、一歩下がってからだぞ」と言った。感心しました。

 私自身は、黄土高原に木を植えて育つのかなという疑問があります。というのは、地下水について分かっていないからです。

 木を植えたら葉から水蒸気が出て、雲ができて、雨が降ってユートピアができると信じている方がいる。だけど、実際には地下水が今、どんどん下がってしまい、黄河は水が流れていません。中国の経済発展のために猛烈に水を使っている。緑の地球ネットワークの大同事務所も、80メートルぐらい井戸を掘らないと水が出ない。最初に作った井戸は役に立たなくなっています。

 文明発祥の地を見ると、森林と草原の境を選んでいます。樹木が後ろにあり、家を建てられる。前に川や草原があり、農耕ができる。ところが、森林と草原の境は、木を切ったらもう育たないんです。どんどん草原になり、砂漠化して石だけが残る。メキシコでもエジプトでも、イラクでも同じこと。大阪市内を高いところから見るとコンクリートばかりで、これは間もなく滅びるなと思います。

 植林は、元に木があったところを狙い、砂漠には植えません。水脈が上がっている砂漠のオアシスに植えたポプラは大きくなりますが、雨が降るという保証はない。誰もいないところに降って終わったら、何をしているのか分からない。

 現地では、両親が離婚し、放り出されて学校も行けない子に、私がお金を出しました。学問のお父さんになるわけです。

 約10年前にはコーヒー10杯分のお金で4年間の義務教育を受けられた。この子が手紙で、緑の大切さを書きました。こんな人を養成すれば、私たちが下手にセレモニーで植えて帰るよりはよっぽど良いでしょう。

 高見さんはよく緑化について相談を受けるそうですが、「やめとけ。うまくいっても10年以上後(あと)やし、あかんかったら、必ずやり玉に挙げられる。こんなに分の悪い仕事はない」といつも言います。そんなことを言いながらも、村の中に入って酒を飲み、ものすごい草の根活動をやっている。
 本当は、この賞は高見さんにあげたいと思っています。


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 ◇外交のすき間、貴重な働き--佐々木高明・委員長選考経過の報告

 第17回毎日国際交流賞には団体83件、個人37件の計120件の推薦がありました。昨年は121件で最多でしたが、それに及ぶような多数の推薦でした。事務局で1次選考を行い、団体7件、個人5件に絞られました。いずれの団体、個人も素晴らしい業績を上げており、選考委員会で慎重に審議した結果、受賞者を決定しました。

 緑の地球ネットワークは、92年1月に設立されました。中国の大同市で緑化協力活動を始めましたが、砂漠化が進んでいたうえ反日感情も強く、当初はかなり苦労されたようです。繰り返し植林をし、現地の人にも納得してもらったようです。中国政府からも高い評価を得ています。

 ルダシングワ(吉田)真美さんは、自分探しの旅ということで、ケニアの首都ナイロビに留学し、ルワンダ人の夫ガテラさんと出会いました。96年にNGOを設立し、ルワンダで義足製作を中心に活動しています。当事者の障害者が主体となって進めている点が素晴らしいところです。

 我が国には、外交や国際関係に大きな問題が残っております。中でも重要なのが、中国や韓国を中心とする東アジアとの関係、あるいは、貧しいアフリカの途上国の救済をどうするかという問題です。緑の地球ネットワークの地道な活動は、東アジア諸国との関係を、民間の草の根レベルで具体的に解決していこうという非常に貴重な動きであったと考えています。吉田さんの活動は、アフリカの途上国への援助を、文字通り個人レベルで大きな努力を尽くすことによって実現された、大変貴重な試みで、高く評価しました。

 このような草の根の試みがいくつも積み重なって、やがて大きなうねりになっていく。そして我が国の国際関係の改善に少しでも役に立つことになれば、毎日国際交流賞の意義も大変重要なのではないかと感じています。(国立民族学博物館名誉教授)

2005年10月6日毎日新聞大阪朝刊