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団体受賞 エイズ予防、心身支える――シェア=国際保健協力市民の会

 第20回毎日国際交流賞(毎日新聞社主催)は、認定NPO法人「シェア=国際保健協力市民の会」(東京都台東区)と、同「JHP・学校をつくる会」(東京都港区)代表理事で脚本家、小山内美江子さん(78)に決まった。シェアはタイなど海外でエイズ予防啓発活動をするほか、国内で在日外国人に医療電話相談などを続けている。小山内さんはカンボジアなどで200棟以上の学校を建設し、児童養護施設を運営している。それぞれの活動を紹介する。【稲垣淳】

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 ■エイズ予防、心身支える――シェア=国際保健協力市民の会

カラオケ店で女性店員(左)に健康をテーマにした絵を描いてもらうシェアスタッフ=シェアの写真はいずれも稲垣淳撮影
 「ソーン・グン・クラップ・バーン(仕送りをしないといけないの)」

 気温37度。青空に入道雲が立ち上る。タイ東北部のラオス国境、ウボンラチャタニ県ケマラートのカラオケ店。シェア・タイ事務所のソンバット・ムーンタ代表(34)や組織運営アドバイザーの田中博さん(45)らスタッフの質問に、店のわらぶき小屋に集まった女性店員5人は口々に答えた。

 店の実態は「売春あっせん」店だ。来店した男性客は、気に入った女性店員を外へ連れ出し、一緒にホテルへ行くシステムという。

 店員は19~28歳。隣国ラオスから越境して働く。ソンバット代表らは、健康をテーマにした絵を描かせ、自分の健康に関心を持たせようとする。エイズなどの感染症予防を呼びかけるためだが、5人の表情はどこか硬い。1人は途中で退席した。シェアの訪問はこの日が3回目。呼びかけは、始まったばかりだ。

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 シェアのタイ事務所から私の足で196歩、茶色に濁るラオス国境のメコン川辺に着いた。今年2月、5代続いた日本人代表を継いで初のタイ人トップとなったソンバット代表は「ケマラートでは、エイズ感染の危険性が高まっている。越境労働者による売春も要因の一つだ」と話す。田中さんも「コンドーム着用などの呼びかけだけでは不十分。時間はかかるが、まず相手と信頼関係を築いて、ゴールを設定する道筋が必要なんです」と解説する。

 事務所はソンバット代表らタイ人5人と田中さんの計6人。今年2月にウボンラチャタニ県中心部から北東60キロのケマラートに事務所を移転した。2010年をめどにタイ事務所の現地法人化を目指している。

 タイでは、91年をピークに100万人以上がHIVに感染、これまで50万人以上が死亡したと推定されている。現在、新たな感染者は年間1万人台。医師の半分近くは国の人口の2割しかいない都市部に集中する。

新天地・ケマラートでの活動を始めたシェア・タイ事務所のスタッフら
 農村部の同県では稲作農閑期に、バンコクなど都市部や漁業地域へ出稼ぎに行った男性が、買春や覚せい剤の回し打ちなどでHIV感染し、帰郷後、妻らへ感染させるケースがあった。

 シェアは90年、タイでまず下痢予防の活動を始めた。医師不足の農村部で、エイズ予防と感染者対策に乗り出したのは94年からだ。県中心部のウボンラチャタニ市に事務所を置き、県内外の病院や保健所と協力して、HIV感染者の自助グループ四つの結成や運営などに協力。病院で患者グループ結成に向け会合を主導してきた。

 地域や学校を対象に、HIV感染者への差別軽減やコンドーム使用の啓発などエイズ予防活動にも取り組んだ。村では自主的なエイズボランティアグループが結成され、学校には生徒が正しいエイズの知識を学ぶエイズクラブもできた。

 ◇患者自助グループを支援

 シェアが支援する自助グループの一つ「サダオワーン」には、同県ワリンチャムラープ郡病院の患者約60人が参加する。郡病院近くの事務所で開く月例会は、治療や互いの悩みを相談する場になっているほか、病院スタッフも参加して健康診断や薬を提供する。

 また、会員から選ばれたリーダー7人が分担し、会員患者の自宅を訪問。抗HIV薬の服用指定時間は厳格に決められ、長期間の服用には周囲の協力が欠かせない。リーダーは服用方法を理解してもらい、患者の家族や近所の人たちともコミュニケーションを図る。

 サダオワーンは郡病院にとっても重要な役割を担う。リーダーが交代で病院に常駐し、看護師らと協力して診察室で患者に薬服用方法などの助言をする。

クイズ形式でエイズについて学ぶフアイカユン中高校の生徒たち
 郡病院看護師のヌアン・ラティアットさん(58)は「10年前にシェアのスタッフが来て、病院にはできない人材育成をしてもらった」と振り返る。かつては看護師1人がエイズカウンセリングを担当していた。当時の患者は社会から阻害され、自殺を考える人もいて、薬の服用の指導も行き届かない状態だったという。

 「ほほ笑みの国」で知られる社交性豊かな国民性だが、かつてHIV感染者は体に触れたり、近寄るだけで感染すると誤解され、家族からも避けられた。女性感染者の1人は「家族との食事に2年間も参加できなかった」と話す。

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 グループリーダー2人の患者への家庭訪問に同行した。HIV感染者の女性、サッアード・コーパンヤーさん(41)は、自助グループに出会うまでの心境を私に打ち明けた。「ユー・コンディアオ(孤独だった)」と。

 8年前に夫が死亡後、感染が判明した。夫からの感染と思われるが、詳細は分からない。「感染していることを知られたくなくて苦しんだ。自殺したいと思っていた」と話す。

 グループには6年前から参加している。「月例会で互いの経験を話し合うことが自分の励みになっている。気持ちを分かってくれる人がいれば元気づけられる」。同居する親族数人も、いつものように笑顔でリーダー2人を出迎えた。

 シェア副代表理事の沢田貴志医師(47)は「昔はエイズは買春など悪いことをしたからかかる病気と思われていて『この村にエイズ対策はいらない』と言われたこともあった。家族に見放され、排せつ物にまみれて亡くなる人もいた。悲壮感が漂っていた当時と、隔世の感がある」と喜んだ。

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 今月、シェアは設立25周年を迎えた。海外拠点はタイを含めて4カ国に広がっている。日本でも在日外国人の医療問題に取り組む。代表理事の本田徹医師(61)は「たとえ経済格差はあっても、健康はすべての人に平等であるべきだ。シェアの活動はその実現が使命」と力を込めた。

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 ■受賞理由
 草の根レベルで活動する国際NGOとして四半世紀の歴史があり、途上国において、地域保健分野などで住民主体の地道な活動を続けてきた。タイ、カンボジアなど海外での活動の一方、国内でも在日外国人の医療格差解消に意欲的に取り組んでいる。国内外どちらかに偏ることなく、バランスの取れた活動をしている。

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 ■シェア=国際保健協力市民の会
 (本田徹代表理事、職員15人、会員491人)は83年設立。保健医療専門の国際NGOとしてタイ、カンボジア、東ティモール、南アフリカでエイズ予防教育や地域保健プロジェクトなどを手がける。日本国内でも、在日外国人対象の無料出張医療相談、医療通訳派遣などに取り組む。事務所は、東京都台東区東上野1の20の6、丸幸ビル5階。電話03・5807・7581。寄付(税控除あり)は、ゆうちょ銀行「00100・1・132730 国際保健協力市民の会」へ。

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 ■毎日国際交流賞とは
 市民レベルの国際交流・協力の支援と国際理解の促進を目的に、毎日新聞社が89年に創設した。外務省が後援、株式会社クボタが協賛する。本社委嘱の選考委員が国内外からの推薦を基に審議して決める。選考委員は佐々木高明(国立民族学博物館名誉教授)▽陳舜臣(作家)▽北沢洋子(国際問題評論家)▽湯下博之(元駐フィリピン大使)▽熊岡路矢(日本国際ボランティアセンター理事)の各氏と菊池哲郎(毎日新聞社主筆)。

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 ■受賞記念講演会とシンポ開催――来月27日、毎日新聞大阪本社ホールで
 第20回毎日国際交流賞の表彰式と受賞記念講演会、20回記念シンポジウムを開きます。

 <日時>9月27日(土)午後1~5時
 <会場>毎日新聞大阪本社オーバルホール(大阪市北区梅田3の4の5)
 <受賞記念講演>「プライマリ・ヘルス・ケアと保健NGOの四半世紀―『人びとと共に』を求めて」本田徹さん(シェア=国際保健協力市民の会代表理事)▽「共に生きる」小山内美江子さん(JHP・学校をつくる会代表理事)
 <記念シンポジウムパネリスト>熊岡路矢さん(日本国際ボランティアセンター=92年受賞=理事)▽菅波茂さん(AMDA=95年受賞=グループ代表)▽徳永瑞子さん(NGOアフリカ友の会代表=02年受賞)▽中村哲さん(ペシャワール会現地代表=92年受賞)
 <定員>先着400人。入場無料
 <申し込み>はがきに郵便番号、住所、氏名を明記し、〒530-8251 毎日新聞大阪本社総合事業局「毎日国際交流賞事務局」へ。折り返し入場証を郵送します。
 <問い合わせ>同事務局(06・6346・8377=平日午前10時~午後6時)

 主催 毎日新聞社
 後援 外務省ほか
 協賛 株式会社クボタ

 (2008年8月21日毎日新聞大阪朝刊)