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個人受賞 校舎建設、学ぶ喜び広げ――小山内美江子さん(JHP・学校をつくる会代表理事)

 第20回毎日国際交流賞(毎日新聞社主催)は、認定NPO法人「シェア=国際保健協力市民の会」(東京都台東区)と、同「JHP・学校をつくる会」(東京都港区)代表理事で脚本家、小山内美江子さん(78)に決まった。シェアはタイなど海外でエイズ予防啓発活動をするほか、国内で在日外国人に医療電話相談などを続けている。小山内さんはカンボジアなどで200棟以上の学校を建設し、児童養護施設を運営している。それぞれの活動を紹介する。【稲垣淳】

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 ■校舎建設、学ぶ喜び広げ――小山内美江子さん(JHP・学校をつくる会代表理事)


カンボジアに建てられた校舎とブランコの前に並んだ小山内さんやスタッフ、子どもたち=JHP提供
 東京都港区浜松町の事務所には、カンボジアの子どもたちに配られるピアニカが山積みされていた。「よく200棟もできた。200棟目は1人1万円ずつ、630人に協力してもらいました」。小山内美江子さんは笑顔を見せた。

 小山内さんが代表理事を務める「JHP・学校をつくる会」は93年、カンボジアで小学校の校舎建設を始めた。建てた校舎は工事中も含め、200棟を超す。費用は1棟500万~600万円。建設費だけで10億円に達する資金は個人・法人の寄付でまかなう。

 数々のドラマを手がけた小山内さんの人脈で、吉永小百合さんや藤原紀香さんら芸能人も活動に協力する。ただ、JHPは「Japan team of young Human Power」の略。活動の主体は学生ら若者だ。大学生らを対象に「国際ボランティア・カレッジ」も開講。カンボジアで現地研修も行い、若者が校舎建設に合わせて校庭にブランコを建設する。

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 80年冬、代表作「3年B組金八先生」で、金八先生が荒川の土手で生徒に、カンボジアの内戦の窮状を話す場面を書いた。「この川が流れ込んだ海のその向こうでは、受験どころか本物の戦争で傷つき、肉親を失い、食うものすらない君たちと同じ年ごろの少年少女がいるということを......」

 「難民を生活の糧にしたような気がして、カンボジアに行きたいと思っていた。でも仕事も忙しくて、実現までに10年以上もかかってしまった」と振り返る。

カンボジアから来日、美容師を目指すモーン・スレイパオさん(奥)とディー・チャリアさん=大阪市中央区の美容院で、三村政司撮影
 海外ボランティアとして活動を始めたのは60歳のころ。イラクがクウェートに侵攻した90年の湾岸危機の際だった。ヨルダン難民キャンプで、イラクから逃れた難民へ食事配給などをした。当時、日本は巨額の戦費負担をしながら、国際社会から「血も流さず、汗もかかない」と批判を受けた。小山内さんは「日本として動けないなら、日本人としてならどう?と思った」。

 92年、今はJHP副代表でもある俳優の二谷英明さんや学生らと、カンボジアで帰還難民の救援活動に参加。ポル・ポト政権下で徹底的に破壊された学校を目の当たりにして、学校建設の必要性を痛感した。

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 カンボジアでは、現在も多くの小中学校で教室が不足。老朽化で、倒壊の危険から十分に授業ができない学校もあるという。JHPには年間60棟の校舎建設の要望が寄せられる。

 JHPは既存の学校に、新校舎とトイレ、井戸などを寄贈する。当初、年1棟だった校舎建設は、ここ数年、20棟ペースになった。プノンペンにある現地事務所(日本人3人、現地スタッフ8人)が、老朽化など優先順位の高い学校を事前調査を経て決めている。

 国内での寄付の理由はさまざまだ。「音楽を勉強していた娘が交通事故に遭って死亡した。カンボジアに音楽教室を建ててもらえませんか」と言う親がいた。10棟分を寄付してくれた会社社長もいる。小銭が詰まったコーヒー瓶が、阪神大震災の被災地・神戸から送られてきたことも。JHPの若者が神戸でボランティア活動をしてくれたお礼にと、お年寄りから届けられた。「瓶入りの寄付金が送られてきたのは一度ではないんです」とほほ笑む。

 ◇児童施設で人材育成も

小山内美江子さん=梅田麻衣子撮影
 02年からは、プノンペン郊外のごみ山で働く子どもたちの生活を支援するため、児童養護施設「幸せの子どもの家」(CCH)も運営する。当初は孤児が中心だったが、今では親の育児放棄や虐待を受けた子どもも含め、5~19歳の49人が生活する。縫製や美容師などの職業訓練を受け、野菜栽培や動物飼育もしている。競争倍率300倍のシンガポールの難関高校へ合格した子も出た。

 CCHからは少女2人が来日し6~9月、大阪で美容師の仕事を体験している。ディー・チャリアさん(16)とモーン・スレイパオさん(16)。大阪市内で美容室4店を経営する中村豊社長(58)=同市東成区=が、2人を招いた。旅費や滞在費は中村さんが負担する。

 中村さんは昨年、大阪で藤原紀香さんの写真展を見てカンボジアの窮状を知った。客にも呼びかけてJHPに約50万円を寄付した。「寄付するだけでは、お金だけの関係で終わってしまう」とカンボジアも訪問。JHPが手がける学校のほか、CCHも訪ねて「自立するには手に職がいる。もし美容師になりたい子がいたら、日本で受け入れますよ」と呼びかけていた。

 2人は店の寮から出勤し、掃除を手伝うほか、空き時間にシャンプーやマッサージを先輩から学んでいる。「シャンプーが難しい」と苦笑するスレイパオさん。2人は「カンボジアのごみ山の子たちは、髪の毛が伸びているし、汚い。自分たちが美容師になって髪の毛を切ってあげたい」と話した。

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 CCHの運営は、メチ・ソカ所長(47)の要望で始まった。ソカ所長は親兄弟をポル・ポト派に殺された。12歳から1人で暮らし、独学で英語も勉強していた。

 小山内さんは「1人で生きていくのに何が大変?と彼に聞いたことがある。『食べ物がない』と言うかと思ったら『相談する人がいなかった』と答えた。それがいじらしくて。その彼が『勉強したいと思っているごみ山の子を育てたい』と言ったから」と、開設の理由を説明する。

 活動を始めて既に18年。「よく、いつまでやるんですか?と聞かれるんです。もういいんじゃないかと思っているんですよ」。冗談交じりに話した後、付け加えた。「でもね、JHPの若い子とか、CCHの小さい子と会ってると、本当にうれしいんですよ」。包み込むような優しい声で笑った。

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 ■受賞理由
 脚本家として知られる小山内美江子さんは、カンボジアで200棟を超える学校校舎の建設に尽力している。金銭的支援にとどまらず、日本の大学生ら若者に現地で建設作業を体験させるなどの人材交流を進め、音楽や美術などの情操教育にも力を入れる。また、国際協力を支える若い人材を積極的に育成している。

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 ■小山内美江子(おさない・みえこ)
 1930年、横浜市生まれ。私立鶴見高等女学校(現鶴見大学付属高校)卒。同市鶴見区在住。脚本家。代表作はテレビドラマ「3年B組金八先生」や大河ドラマ「徳川家康」「翔ぶが如く」。代表理事を務める「JHP・学校をつくる会」はカンボジアで校舎を建設し、児童養護施設を運営する。JHP事務所は、東京都港区浜松町1の25の11、宮下ビル4階。電話03・6411・5261。寄付(税控除あり)は、ゆうちょ銀行「00110・4・356264 特定非営利活動法人JHP・学校をつくる会」へ。

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 ■毎日国際交流賞とは
 市民レベルの国際交流・協力の支援と国際理解の促進を目的に、毎日新聞社が89年に創設した。外務省が後援、株式会社クボタが協賛する。本社委嘱の選考委員が国内外からの推薦を基に審議して決める。選考委員は佐々木高明(国立民族学博物館名誉教授)▽陳舜臣(作家)▽北沢洋子(国際問題評論家)▽湯下博之(元駐フィリピン大使)▽熊岡路矢(日本国際ボランティアセンター理事)の各氏と菊池哲郎(毎日新聞社主筆)。

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 ■受賞記念講演会とシンポ開催――来月27日、毎日新聞大阪本社ホールで
 第20回毎日国際交流賞の表彰式と受賞記念講演会、20回記念シンポジウムを開きます。
 <日時>9月27日(土)午後1~5時
 <会場>毎日新聞大阪本社オーバルホール(大阪市北区梅田3の4の5)
 <受賞記念講演>「プライマリ・ヘルス・ケアと保健NGOの四半世紀―『人びとと共に』を求めて」本田徹さん(シェア=国際保健協力市民の会代表理事)▽「共に生きる」小山内美江子さん(JHP・学校をつくる会代表理事)
 <記念シンポジウムパネリスト>熊岡路矢さん(日本国際ボランティアセンター=92年受賞=理事)▽菅波茂さん(AMDA=95年受賞=グループ代表)▽徳永瑞子さん(NGOアフリカ友の会代表=02年受賞)▽中村哲さん(ペシャワール会現地代表=92年受賞)
 <定員>先着400人。入場無料
 <申し込み>はがきに郵便番号、住所、氏名を明記し、〒530-8251 毎日新聞大阪本社総合事業局「毎日国際交流賞事務局」へ。折り返し入場証を郵送します。
 <問い合わせ>同事務局(06・6346・8377=平日午前10時~午後6時)

 主催 毎日新聞社
 後援 外務省ほか
 協賛 株式会社クボタ

 (2008年8月21日毎日新聞大阪朝刊)