ホーム> イベント> 顕彰> 毎日国際交流賞> 22回> 第22回毎日国際交流賞 自ら木を植え ~ソムニード~

第22回毎日国際交流賞 自ら木を植え ~ソムニード~

 第22回毎日国際交流賞(毎日新聞社主催)は、岐阜県高山市に本部を置く特定非営利活動法人(NPO)ソムニード(和田信明・中田豊一共同代表)と、島根県大田市の「中村ブレイス株式会社」社長の中村俊郎さん(62)に決まった。ソムニードは、インドやネパールなどで、植林などを通じて住民が主体となって行う農村再生などに取り組んできた。中村さんは、義肢装具メーカーを創業、世界的な企業に発展させる傍ら、足を失った子どもに義足を提供したり、マレーシアなどの義肢装具士との技術交流などを続けてきた。それぞれの活動を紹介する。【堀江拓哉、写真も】


◇特定非営利活動法人(岐阜・高山)ソムニード


植林に出かける前に集まる村人たち=インド・アーンドラプラデシュ州で2010年7月12日、堀江拓哉撮影
植林に出かける前に集まる村人たち=インド・アーンドラプラデシュ州で2010年7月12日、堀江拓哉撮影


インド・ビシャカパトナムの地図
インド・ビシャカパトナムの地図

 インドやネパールでの植林を中心とした森林保全、水利改善の支援事業や都市における貧困女性の自立支援などへの地道な取り組みが評価された。
 「与える」支援ではなく、地域の資源を活用する方法を考え、地域の人に意識や行動の変化が表れるような協力をしてきた。「ソムニード方式」と呼ばれるまでになった方法論を確立している。
 「地域の課題は世界の課題」というポリシーを持ち、国内の地域づくりと海外での活動を連携させている。


 ◇住民と共に地域を育てる


 「ソムニードが君たちに伝えたことで、最も大切なことは何だったか」。インド南部・アーンドラプラデシュ州北東部。州境に近い山岳地帯で、和田信明共同代表(60)が、少数民族の集落・ブータラグダ村の教会兼集会所で若者たちに問いかけた。若者たちは顔を見合わせながら「測量」「水」などを口にする。和田代表は、首を振り、表情を変えず答えを待つ。「常に、皆がそうするようにしてきたことだ」。しばらくして一人の若者が答えた。「考えること」。和田代表の表情が緩んだ。

植林作業をする若者たち=インド・アーンドラプラデシュ州で2010年7月12日、堀江拓哉撮影
植林作業をする若者たち=インド・アーンドラプラデシュ州で2010年7月12日、堀江拓哉撮影
 ソムニードは、7月までの3年間、同村などの農村で「地域住民主導による小規模流域管理と森林再生を通した共有資源管理とコミュニティ開発」というプロジェクトを、国際協力機構(JICA)の支援で実施してきた。上・下流も含めて水を確保し、土壌を守りながら農業を続けるために何をすべきかを村の人々が考え、そのための植林やため池づくりなどを支援した。
 まいた種や植えた苗、株はカシューやマンゴーをはじめ約70種計約14万個。どんな種類をどこに、などの計画は、すべて村人が立てた。ため池などの管理のための組織づくりも、村人たちが手がけた。ソムニードは、その計画づくりや、組織づくりなどに必要なノウハウを、研修という形で村の人たちに伝えることに、プロジェクトの時間の大部分を費やした。「村に入る時に『こういうことをやります』と言った時点で依存関係ができる。プロジェクトは、住民と一緒に作ってきた」と和田代表は話す。
   * * *
 92年、和田代表の友人のインド人が代表だった非政府組織(NGO)が資金難に陥った。支援のため翌年、和田代表は前身となる「サンガムの会」を設立し、インド、ネパールなどで地域開発を中心に取り組んできた。特徴は、何かを「与える」支援ではなく、住民に「気づき」を促すことだ。和田代表は「課題を当事者だけで考えるのは難しい。われわれは引いた目線で、気づきを促す」と説明する。何が問題で、どうすべきなのか、対話を重ねることで浮かび上がらせていく。
 このような考えに至ったのには理由がある。インドで村落開発支援に携わり始めたころ「歯を無理やり抜いて、新たに入れ歯を着けるような『援助』をたくさん見てきた」からだ。「先進国の価値観を持ち込んだとたんに"ないもの探し"になってしまう。そうすると、彼らのことが見えなくなってしまう」
   * * *

マイクロクレジットについて学ぶ女性たち=インド・ビシャカパトナムで2010年7月16日、堀江拓哉撮影
マイクロクレジットについて学ぶ女性たち=インド・ビシャカパトナムで2010年7月16日、堀江拓哉撮影
 同州の都市・ビシャカパトナムのスラム街にあるアリプラム地区。女性たちが貯蓄と小規模融資を行っているマイクロクレジットのグループの連合体・VVK(ビシャカ・ワニタ・クランティ)代表のラマラクシュミさん(31)は、自宅に集まった約15人に熱心にVVKの利点を説明していた。「お金を借りると利子を払わないといけないが、VVK銀行から借りると銀行に払う利子はVVKの利益になる。つまり自分たちの利益になる」
 自助グループが集まって設立した05年当時はメンバーは98人だったが、現在は約870人に。ソムニードは、組織づくりや運営を支援してきた。ラマラクシュミさんは「今年度中に、会員数を1000人にしたい」と目標を話し、「街の銀行のようにオフィスを開いて、多くの女性たちが足を運んでくれるようにしたい」と目を輝かせた。
 主にアジア地域で人づくりの活動を続けてきたソムニードだが、「地方だからこそできることもある」と地元でも活動を展開してきた。飛騨地方に住む外国人女性のために、同じ境遇の人や日本人サポーターとの出会いの場やネットワークづくりなど生活支援活動も続けている。
 今後について和田代表は「援助の方法論は確立できたと思う。今後はアフリカに行きたい」。活動は、さらに広がっていきそうだ。


 ◇親友のNGO支援からスタート

和田信明 NPO「ソムニード」共同代表
和田信明 NPO「ソムニード」共同代表
 和田信明共同代表=写真=は93年、親友で、現在も一緒に活動するラマ・ラージュさんが代表だったNGOを支援しようと前身の団体を設立。99年に「ソムニード・サンガム」としてNPO法人化し、03年にソムニードに改称した。
 ソムニードは「Society for Mutual aid(相互扶助)、Networking(ネットワーク)、Environment(環境)、Education(教育)&Development(開発)」の頭文字をつなげた造語。インド・ビシャカパトナムとネパール・カトマンズに現地法人がある。事務局は〒506―0032 岐阜県高山市千島町900の1 飛騨・世界生活文化センター内。電話は0577・33・4097、ファクスは0577・36・5471。


・・・・・・・*・・・・・・・*・・・・・・・個人賞へ・・・・・・・*・・・・・・・*・・・・・・・

(2010年8月30日東京朝刊)