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【特集】備えの大切さ、国内外に発信へ

2009年1月28日
 学校や地域で取り組む防災教育を顕彰する「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社、兵庫県、ひょうご震災記念21世紀研究機構主催=の表彰式・発表会が11日、神戸市中央区の兵庫県公館であった。今年度は小、中、高、大学の4部門に国内外から計118校・団体の応募があり、26団体が受賞。そのうち、グランプリやぼうさい大賞、優秀賞などに輝いた11団体が発表会で活動内容を報告した。地域の防災リーダーを目指したり、被災地ならではのメッセージを発信するなど、「備え」や「人との結びつき」の大切さを訴える発表に、参加した約250人が熱心に耳を傾けた。

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震災復興の兵庫県のマスコット「はばタン」も登場して会場を盛り上げた1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」表彰式
 ◇社会の力結集「市民救命士講習」--グランプリ・神戸学院大防災ユニット

 ◇四川での活動紹介--兵庫県立舞子高

 ◇住民との協力訴え--宮城県気仙沼市立階上中

 震災を経験した神戸や宮城県の団体は、その教訓を国内外に発信するなど、積極的な活動が目立った。グランプリに輝いた神戸学院大防災・社会貢献ユニットは、全国に約100セットを配布した小学生用の防災教材や、地元住民を対象に行っている「市民救命士講習」について紹介した。

 教材は、小学校で通常教える科目に沿って、災害時にどのように役立つかを学べるようになっている。市民救命士講習は、阪神大震災の教訓から、市民力を充実させることでより多くの命を救うことができるという考えから始めた。講師の資格を持った学生が、心肺蘇生の方法などを地域住民に教えている。那須琢也さん(3年)は「防災は未知の分野で、社会が変われば防災も変わる。常に学び続けたい」と話した。

 兵庫県立舞子高環境防災科は「神戸からカトマンズ・四川へ」というテーマで発表した。交流を続けているネパールでの活動に加えて、昨年5月に発生した四川大地震の被災地での活動を紹介。国内だけでなく、国外にも防災の輪を広げる活動を行っている。

 発表では、ネパールで現地住民と地震を想定した訓練をしたり、四川大地震の被災地で現地の子供たちに防災教育を行った様子などを紹介。小島汀(おじまみぎわ)さん(2年)は「私たちが学んできた防災教育を他国の人たちと共有していきたい」と話した。

 03年の宮城県北部地震を経験した宮城県気仙沼市立階上(はしかみ)中は「私たちは未来の防災戦士」と題して、過去3年間の活動を紹介した。同校の校区は、断層があるうえに海岸も近いため、地震が発生した場合は被害が拡大しやすい。発表では、周辺住民と一緒になって災害に備えることが大事ということを訴えた。小野寺晴海さん(3年)は「後輩たちにも地域のことをしっかり学んでもらいたい」と話した。

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「子ども防災ワークショップ」で、スゴロク形式の防災クイズにチャレンジ
 ■受賞者の声

 ◆他校の発表に刺激を受けた/日ごろからどう動けばいいか考えたい

 ◇宮城県気仙沼市立階上中3年、佐々木瞳さん
 終わってほっとした。地域と協力してやっているということがきちんと言えた。

 ◇宮城県南三陸町立入谷中3年、佐藤秀志さん
 今までやってきたことをみんなに伝えることができてうれしい。同じ宮城県の階上中の発表にも刺激を受けた。

 ◇東京都府中市立府中第八中、渡部博校長
 町内会などと協力して災害時に高齢者などの要支援者を助ける方法を考えるなど、生徒と相談しながら取り組みを進めたい。

 ◇千葉科学大学学生消防隊2年、影島聖道さん
 消防隊として地域を守るだけでなく、地域住民と協力して防災意識の向上に取り組みたい。

 ◇愛知県・安城学園高2年、松永美咲さん
 助け合いの精神を学校全体に広げ、地震が起きた時は積極的に支援したい。

 ◇中部大ボランティア・NPOセンター(同大1年)、山岸春香さん
 看護師を目指す身として命の大切さについて伝えていきたい。

 ◇愛知県立日進高1年、松崎友寛さん
 地域の人々と協力して災害に備えることの大切さを知った。今後、一緒に活動していきたい。

 ◇立命館大国際協力学生実行委員会1年、浅田修志さん
 日本では小中学生でも自主的に防災活動に取り組んでいることをインドネシアの子供たちに伝え、地域ぐるみの防災活動を進めたい。

 ◇摂南大ボランティア・スタッフズのメンバー(同大3年)、坂本麻央さん
 災害時に調理器具がなくても作れる料理を勉強したい。

 ◇神戸学院大学学際教育機構防災・社会貢献ユニット4年、前田緑さん
 防災は特別なことではなく、誰でもできること。それを理解してもらうために、今後も発信していきたい。

 ◇兵庫県立舞子高2年、松下美紅さん
 心に傷を負った子供たちの反応を知らないと、大人は対応できない。大学では心理学を学び、多くの人に知らせたい。

 ◇あしなが育英会「四川大地震遺児の心の癒(いや)し使節団」富岡誠さん(53)
 四川の震災遺児を日本に呼び、交流を続けたい。継続が、震災を伝えることにつながる。

 ◇和歌山県立田辺工業高1年、上岡洋平さん
 歌やクイズを交えて、広い世代に楽しく分かりやすく工夫して防災を伝えたい。

 ◇徳島市津田中1年、渡辺礼華さん
 地域にはお年寄りが多い。日ごろからどう動けばいいのかを考え、津波から守りたい。

 ◇高知県四万十町立興津小6年、村田彩乃さん
 中学生になっても興津小の後輩と協力して、地域の防災に取り組みたい。

 ◇高知県立高知工業高3年、細木智広さん
 高校卒業後も地元に残る予定なので地域の自主防災組織を通じて防災の大切さを地元の子供たちに伝えていきたい。

 ◇高知県立高知東高2年、有澤智恵子さん
 3年になったらなるべく校外の防災イベントにも参加したい。将来は地域の自主防災組織の一員になりたい。

 ◇水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊(山口県防府市立向島小6年)、御園生由衣香さん
 防災サインを練習して、耳の聞こえない人を助けられるようになりたい。

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「子ども防災ワークショップ」で、新聞紙で作ったスリッパを笑顔で掲げる「ぼうさい甲子園」の参加者たち
 ◆知ってるつもりで知らないことも

 ◇スゴロクで避難法確認--ワークショップ

 ぼうさい甲子園の表彰式・発表会の前後には神戸市内で各種の防災イベントが開かれ、応募団体の子供や学生も参加した。

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 10日に人と防災未来センター(中央区)であった「災害メモリアルKOBE2009」は、有識者らでつくる実行委主催。阪神大震災の被災体験を聞く授業を受けた小学生が感想文を発表したり、舞子高の生徒が中国・四川大地震の被災地を訪れた時の状況を報告した。会場には、非常食の炊き出しや、震災や防災を学ぶコーナーが設けられた。イベント後は、希望者が同センターを見学した。

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「子ども防災ワークショップ」で、三角きんの使い方を学ぶ
 12日には神戸学院大ポートアイランドキャンパス(同)で「子ども防災ワークショップ」があった。防災教育の普及などに取り組むNPO「さくらネット」(兵庫県西宮市、電話0798・64・5829)の主催。

 人気だったのは、防災クイズ50問を解きながら進む「等身大スゴロク」。災害の種類や特徴▽避難方法▽避難所での行動▽高齢者などへの支援方法――といった六つのテーマごとにクイズが並べられ、子供たちは問題が張られた90センチ四方の段ボールに座り込みながら取り組んだ。問題をめくると答えが確認できる仕組みで、答え合わせのたびに一喜一憂。参加した興津小6年の村田彩乃さん(12)は「楽しい。知ってるつもりで知らないこともあったし、一石二鳥」と笑顔を見せていた。

 このほか、新聞紙を折ってスリッパを作ったり、毛布と棒を利用した簡易担架で人を運ぶ体験もした。

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津波被害を想定した防災活動を発表する高知県四万十町立興津小の児童
 ◇地域のリーダーに--和歌山県立田辺工業高

 ◇津波被害予防活動--高知県四万十町立興津小

 ◇小学生対象の教室--中部大NPOセンター

 ◇高齢者と炊き出し--徳島市津田中

 地域との連携を重視し、率先して防災の中心的役割を担う団体も多かった。和歌山県立田辺工業高は「地域とともに進める防災活動~防災リーダーを目指して~」と題し、活動内容を紹介。いざという時の避難生活や防災のためには住民同士のきずなが重要と考え、地域の清掃ボランティアや防犯パトロールに参加するなどして、住民と交流を深めていることを説明した。

地域に根ざした活動を卒業生とともに報告する徳島市津田中の生徒たち
 同校は08年度から、選択教科「防災」を新設。08年12月には同教科の受講生が中心となり、同県田辺市で「市内高校生防災フォーラム」を開いた。市内の4高校の生徒約900人を前に、昭和南海地震の津波被害などについて伝えた様子を、写真を交えて紹介した。2年の〓畑英次さんは「幼稚園や小学校とも交流し、防災意識や知識を広げたい。この賞を励みに頑張る」と決意を述べた。

 高知県四万十町立興津小は、南海地震が発生した場合に地区の孤立と津波被害が予想される。発表では、この被害を最小限にとどめるための取り組みを紹介した。

 校区内の電柱120本に海抜を知らせる「海抜ステッカー」を張って、津波の恐れがある時には安全な高台へ逃げるように呼びかけたり、誘導灯が設置された避難場所へ夜間に実際行ってみて、明るさが十分かどうかを確認したことなどを報告した。最後に「私たち6年生の防災提言」として、避難場所でのトイレや給水施設の整備や、地域の人たちが地震に備える気持ちを持つことが大切、などと呼びかけた。6年の甫喜本(ほきもと)胡桃さんは「避難誘導灯の設置など、まだ整備が必要なところがたくさんある。地区のためこれからも防災の活動を続けたい」と意気込んだ。

手話をもとに考案した「ぼうさいサイン」を披露する山口県防府市の水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊
 中部大ボランティア・NPOセンター(愛知県)は、自治体と連携しての防災訓練や、学内の防災訓練でのAED(自動体外式除細動器)の使用方法の講習、小学生対象の防災教室「まなぼうさい」の実施など、3年間の活動を報告した。同大3年の清水進吾さん(21)は「人と人とのつながりでできた防災の輪を大切に、今後も活動していきたい」と決意を語った。

 大地震の際に津波被害が想定される徳島市津田中は今年度は「地域と共に歩む防災学習」をテーマに、地域の自主防災組織と共同で、避難場所や避難経路を確認したり、炊き出し訓練に参加した。その際、高齢者の気持ちに近づくため、足におもりをつけたり、視野を狭くするメガネをかけて行った。同中では5年前から防災教育に力を入れており、発表会には卒業生も参加。中学生や高校生が防災面で大きな力になることを説明した。

 宮城県南三陸町立入谷中は、昨年10月に、地域住民と合同で開いた避難訓練の様子を、映像を交えて紹介した。

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 ◇手話サインを考案--山口県防府市アカザ隊

 ◇ジオラマ使い説明--愛知県・安城学園高

学校が震災被害にあったとの想定で製作したジオラマの横で発表する愛知県の安城学園高の生徒たち
 被災体験がない子供や若者たちも、「もし身近で災害が起こったら」と想像力を働かせて意欲的に取り組んだ成果を披露した。山口県防府市の小学生らで結成する「水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊」は避難訓練で聴覚障害者と接したのを機に、手話などをもとにして分かりやすい防災サインを考案した。片手を頭に載せる「OK」や両方の手のひらを上に向ける「分かりません」など約50種類のサインを聴覚障害者と一緒に考えた。発表会では数種類のサインを、覚えやすいようにユーモアを交えて実演。発表の最後は会場の参加者全員に「OK」サインをするよう呼びかけ、盛り上げた。

 安城学園高(愛知県)は、2年2組の生徒が学園祭で取り組んだ企画を発表した。自分たちの学校が震災被害を受けたらどうなるかを考え、作り上げた模型(ジオラマ)の展示など10種を企画。学園祭当日、生徒が分担して説明を担当した様子を写真などで紹介し、「今後も地震への備えや、支え合うことの大切さを考えていきたい」と締めくくった。

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表彰式・発表会の会場に展示された受賞校の活動報告や、「防災力強化県民運動ポスターコンクール」入賞作品
 ◆新設「だいじょうぶ賞」

 ◇アイデア非常灯--大賞の高知工業高

 今回、新設された「だいじょうぶ賞」は安心、安全なまちづくりを目指す「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会(会長、国松孝次・元警察庁長官)にちなんだ賞。防犯活動にも応用できる取り組みを対象に、従来の「希望賞」を衣替えした。その中で最も優れた取り組みと評価された高知県立高知工業高が「だいじょうぶ大賞」を受賞した。

 同高は、地震などの災害が起きた際の地域の避難所に指定されており、土木科と電気科が協力して校門近くや、大きな津波被害が予想される高知市南部の海に近い地域に災害時用の非常灯を設置した。発表では、非常灯は停電時に備え太陽光発電式にし、津波でバッテリーが水没しないよう2メートル以上の高さに電気系統部分を配置したことなど工夫を凝らした点を報告した。3年の大崎弥(ひろし)さん(18)は「自分たちの活動を、地域の防災意識の向上につなげたい」と語った。

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発表会で司会を務めた神戸市出身で早稲田災害対策学生チームの溝上晶子さん
 ◇「率先して活動を」--発表会司会・早稲田大3年、溝上晶子さん

 発表会では、早稲田大3年で、防災団体「早稲田災害対策学生チーム」副代表の溝上(みぞがみ)晶子さん(21)が司会を務めた。溝上さんは神戸市出身。阪神大震災の時は7歳で、同市須磨区の自宅にいた。その日、父に連れられ、親類の家がある長田方面までがれきの上を歩いた。町が燃えている様子や、公園のような場所に遺体が並べられているのを見た記憶があるという。

 兵庫県立須磨友が丘高時代、所属する放送委員会で震災を伝える番組を制作するなど防災活動に取り組み始めた。現在暮らす東京では、首都直下型地震が懸念されるのに、神戸と比べて防災に対する意識が低い人が多く、当初は戸惑ったという。しかし「体験のない人に震災がどんなものかを伝えなくては」と気付き、昨夏、高校時代の先輩や神戸の現役高校生らとともに警察官の震災体験記をもとにした音声ドラマを制作した。

 溝上さんは発表会で「私たち学生が防災活動を率先して行えば地域の防災力は向上し、人々の意識も変わる」と参加者にエールを送った。

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 ◇「継続」に期待--河田惠昭・選考委員長

 地域の実情に合った取り組みをしているかどうかという「地域性」や「独創性」「自主性」「継続性」の四つの観点から審査した。

 昨年は中国・四川大地震、岩手・宮城内陸地震が起こった。受賞団体は、東海・南海・東南海地震など次の災害に備えるだけでなく、国内外の被災地への災害復興支援、さらに震災の経験と教訓を語り継ぐ活動などさまざまな取り組みが評価された。

 防災は日々の取り組みを続けることが重要だ。着眼点や取り組み方法などは大人も学ぶべきところが多い。皆さんが今後も安全で安心な社会づくりに向けた取り組みを継続するよう期待する。

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◇08年度受賞校・団体◇

【ぼうさい大賞】4点(うち1点がグランプリ)
高知県四万十町立興津小
宮城県南三陸町立入谷中
和歌山県立田辺工業高
神戸学院大防災・社会貢献ユニット(神戸市)=グランプリ

【選考委員特別賞】1点
兵庫県立舞子高

【優秀賞】4点
水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊(山口県)
徳島市津田中
安城学園高(愛知県)
中部大ボランティア・NPOセンター(同)

【奨励賞】8点
千葉県我孫子市立布佐南小
和歌山市立四箇郷北小
愛媛県新居浜市立多喜浜小
新潟県長岡市立山古志中
高知県立高知東高
愛知県立日進高
摂南大ボランティア・スタッフズ(大阪府)
立命館大国際協力学生実行委員会(京都市)

【はばタン賞】5点(うち1点が大賞)
神戸市立明親小
長崎県南島原市立大野木場小
宮城県気仙沼市立階上中=はばタン大賞
あしなが育英会・四川大地震遺児の心の癒し使節団(神戸市)
神戸大中国留学生四川震災復興支援の会(同)

【だいじょうぶ賞】4点(うち1点が大賞)
三重県尾鷲市立尾鷲小
東京都府中市立府中第八中
高知県立高知工業高=だいじょうぶ大賞
千葉科学大学生消防隊(千葉県)

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 記事は牧野宏美、衛藤達生(大阪社会部)渋江千春(大阪科学環境部)山田奈緒、幸長由子、中里顕(阪神支局)岩嶋悟、高山梓(神戸支局)、写真は三村政司、小関勉(大阪写真部)が担当しました。

(2009年1月28日大阪朝刊掲載)