2010年1月 6日
学校や地域で取り組む防災教育・活動を顕彰する「ぼうさい甲子園(1・17防災未来賞)」(毎日新聞社、兵庫県など主催)の表彰式と発表会が2010年1月10日、神戸市中央区の兵庫県公館で開かれる。今年度は小学校、中学校、高校、大学の4部門に計80校・団体の応募があった。応募の中から、特に地元と連携したユニークな取り組みをしている4校を紹介。さらに防災教育の研究者が神戸市で実践した授業の様子を報告する。発表会の問い合わせは、人と防災未来センター普及課(078・262・5060)。
◆北海道・弁華別中――「考える力」を養う
北海道当別町立弁華別中学校は近くに、直下型地震の原因となる活断層「当別断層」があることが分かり、07年度から防災をテーマにした取り組みをしている。高橋尚夫校長は「災害時、自分の命は自分で守る。その上で他人のために、手をさしのべられる人になってほしい」と語る。当別町や地元の航空自衛隊、消防署などの協力を得て、応急処置や救命などを体験。今年度は全校生徒が参加して、災害図上訓練(DIG)も行った。
ぼうさい甲子園に今年、初応募したが、入賞にはならなかった。ただ、自分たちができることに着目し安心・安全な地域づくりを考えた点や、総合学習で育てた野菜を収穫し、炊き出し体験を行うなど、独自の手法に審査会の評価は高かった。
電気ショックで心肺を蘇生させるAED(自動体外式除細動器)を使った救命体験をした2年生の天野良祐君(13)は、「一定のリズムを継続してやるのが難しい」と感想を述べる。同じく2年生の小久江麻美さん(14)は「学んだことを生かし、もし、人を助けることができればうれしい」と笑顔を見せた。
防災教育を担当する山崎秀雄教諭は「災害が起きた時、何ができるかを自分たちで考えられるようになってほしい」と話し、今後の防災教育に意欲を示した。【玉木達也、写真も】
◆神奈川・相原高――災害救助犬と共に
校庭に並ぶ三つの箱のうち一つの前で、災害救助犬ライス号(ラブラドルレトリバー、雄6歳)がほえる。「ワン、ワン」。神奈川県立相原高校(相模原市)の部活動「農業クラブ畜産科学分会ドッグチーム」の生徒が隠れた箱を的中させた。人の呼吸をかぎ取る生存者の捜索・救助訓練。放課後の日課だ。
災害救助犬を飼育する高校は全国に例がない。チームは畜産科学科1~3年生7人。ライス号の毎朝20分間の校内散歩と放課後の訓練を続けている。ライス号は阪神大震災で出動した祖母の血をひく。卒業生が勤める横須賀警察犬訓練所(同県横須賀市)の進藤晃所長が08年7月に譲ってくれた。働く犬について学ぼうと同所を何度も訪ねた生徒たちが、災害救助犬の必要性を、理解していると感じたからだ。生徒たちは部顧問の中村愛教諭(33)に飼育管理を教わり、プロの訓練士の指導を受けた。
チームは今年1月、高校近くの相模原北署で市消防局との大震災対策訓練に出動し、被災者捜索のデモンストレーションを披露した。地域の子ども向け事業や文化祭など学校行事でも災害救助犬をアピールしている。
チーム代表の3年、金田沙織さん(17)は「活動を通じて住民の防災意識を高め、人の命の大切さを訴えたい」と話す。【高橋和夫、写真も】
◆兵庫・精道小――後輩に「語り継ぎ」
阪神大震災で児童8人が犠牲になった兵庫県芦屋市立精道小学校は04年度から、6年生が被災の様子や復興の状況を調べて5年生に伝える「語り継ぐ会」を開いている。毎年1月に開かれる追悼式には全児童が参加し、遺族の言葉に聴き入る。取り組みが評価され、被災地での活動を対象にした今年度の「はばタン賞」を受賞。赤山のり子教諭は「1年生の時から震災を語り継ぐ環境にある。追悼式は厳粛な雰囲気に包まれます」と話す。
語り継ぐ会では、6年生の児童らが▽芦屋の被害の様子▽ボランティア▽復興の状況――などのテーマごとにグループを構成。校内には、当時の状況を物語る写真や資料を展示している震災資料室があり、児童は教室と行き来して、それぞれのテーマを調べる。調査の事前準備として、神戸市の「人と防災未来センター」を見学するほか、同小卒業生にも被災体験を聞く。
山本碧都(あいと)さん(12)は救援物資について調べており、「北海道から沖縄までの日本全国、米国やロシアからも送られてきたことを知りました」と目を輝かす。公共交通機関など復興の様子を調べている平島瑳津季(さつき)さん(12)は「震災を体験していないけど、被災者の思いを知ることは大事。私たちの子どもの世代まで、ずっと語り継がないといけない」と力強い。【小坂剛志、写真も】
◆大分・佐伯豊南高――市民から「意識調査」
大分県立佐伯豊南高生徒会はボランティア部・レオクラブと一緒になって、96年度から災害被災地支援のため街頭募金活動をし、被災地に義援金を贈る活動を続けてきた。05年3月~07年12月、地元の佐伯市など県内で計15回、「防災意識調査」も実施。「地域防災のあり方を考え直そう」と、募金活動と同時に直接対面方式で一般市民416人から聞き取った。
この意識調査を分析した結果、「地震や台風などの災害に関心がある」と答えた人が約97%と高率だったにもかかわらず、「防災対策をしていない」という人が約67%に上った。また、国や自治体の復興支援や防災対策について「満足していない」人が約67%もいることも判明。この結果を県消防防災課に資料として提出した。
生徒会とレオクラブは災害時の指定避難場所を現地調査し、避難路やスペースを確認。2年に1度、県などに報告している。このほか、1人暮らしのお年寄り宅を訪問し、防災安全度を確認する取り組みも実施している。
生徒会は、防犯活動にも応用できる取り組みをした今年度の「だいじょうぶ賞」を受賞した。世話役の波多野恭行教諭(46)は「先輩がノウハウを後輩に伝え、後輩が活動を受け継いできた。継続することの大切さが分かった」と喜んだ。【古田健治、写真も】
◆兵庫・西脇小で実践授業――知識は伝え過ぎない 「防災教育」は経験させて育つ
来年4月、関西大に設置される社会安全学部(大阪府高槻市)で助教に就任する城下英行さん(28)=京都大院情報学研究科=は、防災教育のあり方を研究している。「知識を伝え過ぎない防災教育」が理想で、実践授業として11月、神戸市垂水区の市立西脇小学校(原口正丈校長)で、4年生71人に防災教育を行った。
テーマは「災害が起こると私たちの生活はどうなるか」。阪神大震災の時、家族や、地域の警察や消防、スーパーマーケットなどで働く人が何に困り、今どんな備えをしているか1週間で調べ、発表する内容だ。
児童は震災を実体験で知らない世代。だが、授業での情報提供は、あえて死傷者数のデータ、避難所の様子などを写した写真数枚を示す程度にとどめた。
1週間後。児童は、▽警察で業務にあたる人手が足りなかったこと▽スーパーで全商品を一つ100円で売ったこと▽震災を教訓に、店では重い商品や割れ物を陳列棚の下に置いていること、などを紹介。インタビューなどを通じて子どもたちが見つけた答えだ。授業の最後、城下さんは、児童に次の課題として、各家庭の防災対策作りを呼びかけた。知識によらない防災教育の狙いはここにある。「従来の避難訓練や、地震の話を聞くだけでは意味がない」と城下さん。「身近でできることを考え、子どもたちに『自分が本当の防災対策に役立った』という経験をさせてこそ、意識が育つ」と話した。【青木絵美、写真も】
(2009年12月30日朝刊掲載)
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◆北海道・弁華別中――「考える力」を養う
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AEDを使って救命訓練に取り組む生徒ら=北海道当別町の町立弁華別中学校で |
ぼうさい甲子園に今年、初応募したが、入賞にはならなかった。ただ、自分たちができることに着目し安心・安全な地域づくりを考えた点や、総合学習で育てた野菜を収穫し、炊き出し体験を行うなど、独自の手法に審査会の評価は高かった。
電気ショックで心肺を蘇生させるAED(自動体外式除細動器)を使った救命体験をした2年生の天野良祐君(13)は、「一定のリズムを継続してやるのが難しい」と感想を述べる。同じく2年生の小久江麻美さん(14)は「学んだことを生かし、もし、人を助けることができればうれしい」と笑顔を見せた。
防災教育を担当する山崎秀雄教諭は「災害が起きた時、何ができるかを自分たちで考えられるようになってほしい」と話し、今後の防災教育に意欲を示した。【玉木達也、写真も】
◆神奈川・相原高――災害救助犬と共に
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災害救助犬を飼育する高校は全国に例がない。チームは畜産科学科1~3年生7人。ライス号の毎朝20分間の校内散歩と放課後の訓練を続けている。ライス号は阪神大震災で出動した祖母の血をひく。卒業生が勤める横須賀警察犬訓練所(同県横須賀市)の進藤晃所長が08年7月に譲ってくれた。働く犬について学ぼうと同所を何度も訪ねた生徒たちが、災害救助犬の必要性を、理解していると感じたからだ。生徒たちは部顧問の中村愛教諭(33)に飼育管理を教わり、プロの訓練士の指導を受けた。
チームは今年1月、高校近くの相模原北署で市消防局との大震災対策訓練に出動し、被災者捜索のデモンストレーションを披露した。地域の子ども向け事業や文化祭など学校行事でも災害救助犬をアピールしている。
チーム代表の3年、金田沙織さん(17)は「活動を通じて住民の防災意識を高め、人の命の大切さを訴えたい」と話す。【高橋和夫、写真も】
◆兵庫・精道小――後輩に「語り継ぎ」
阪神大震災で児童8人が犠牲になった兵庫県芦屋市立精道小学校は04年度から、6年生が被災の様子や復興の状況を調べて5年生に伝える「語り継ぐ会」を開いている。毎年1月に開かれる追悼式には全児童が参加し、遺族の言葉に聴き入る。取り組みが評価され、被災地での活動を対象にした今年度の「はばタン賞」を受賞。赤山のり子教諭は「1年生の時から震災を語り継ぐ環境にある。追悼式は厳粛な雰囲気に包まれます」と話す。
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山本碧都(あいと)さん(12)は救援物資について調べており、「北海道から沖縄までの日本全国、米国やロシアからも送られてきたことを知りました」と目を輝かす。公共交通機関など復興の様子を調べている平島瑳津季(さつき)さん(12)は「震災を体験していないけど、被災者の思いを知ることは大事。私たちの子どもの世代まで、ずっと語り継がないといけない」と力強い。【小坂剛志、写真も】
◆大分・佐伯豊南高――市民から「意識調査」
大分県立佐伯豊南高生徒会はボランティア部・レオクラブと一緒になって、96年度から災害被災地支援のため街頭募金活動をし、被災地に義援金を贈る活動を続けてきた。05年3月~07年12月、地元の佐伯市など県内で計15回、「防災意識調査」も実施。「地域防災のあり方を考え直そう」と、募金活動と同時に直接対面方式で一般市民416人から聞き取った。
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「だいじょうぶ賞」を受賞した佐伯豊南高の波多野教諭(後列左端)と生徒会、レオクラブのメンバー=大分県佐伯市で |
生徒会とレオクラブは災害時の指定避難場所を現地調査し、避難路やスペースを確認。2年に1度、県などに報告している。このほか、1人暮らしのお年寄り宅を訪問し、防災安全度を確認する取り組みも実施している。
生徒会は、防犯活動にも応用できる取り組みをした今年度の「だいじょうぶ賞」を受賞した。世話役の波多野恭行教諭(46)は「先輩がノウハウを後輩に伝え、後輩が活動を受け継いできた。継続することの大切さが分かった」と喜んだ。【古田健治、写真も】
◆兵庫・西脇小で実践授業――知識は伝え過ぎない 「防災教育」は経験させて育つ
来年4月、関西大に設置される社会安全学部(大阪府高槻市)で助教に就任する城下英行さん(28)=京都大院情報学研究科=は、防災教育のあり方を研究している。「知識を伝え過ぎない防災教育」が理想で、実践授業として11月、神戸市垂水区の市立西脇小学校(原口正丈校長)で、4年生71人に防災教育を行った。
テーマは「災害が起こると私たちの生活はどうなるか」。阪神大震災の時、家族や、地域の警察や消防、スーパーマーケットなどで働く人が何に困り、今どんな備えをしているか1週間で調べ、発表する内容だ。
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阪神大震災について班ごとに発表する児童ら(左後方が城下さん)=神戸市垂水区の市立西脇小で |
1週間後。児童は、▽警察で業務にあたる人手が足りなかったこと▽スーパーで全商品を一つ100円で売ったこと▽震災を教訓に、店では重い商品や割れ物を陳列棚の下に置いていること、などを紹介。インタビューなどを通じて子どもたちが見つけた答えだ。授業の最後、城下さんは、児童に次の課題として、各家庭の防災対策作りを呼びかけた。知識によらない防災教育の狙いはここにある。「従来の避難訓練や、地震の話を聞くだけでは意味がない」と城下さん。「身近でできることを考え、子どもたちに『自分が本当の防災対策に役立った』という経験をさせてこそ、意識が育つ」と話した。【青木絵美、写真も】
(2009年12月30日朝刊掲載)










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