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【特集】あすへの備え 学校・地域から発信

2010年1月29日

支え合い膨らむ 表彰式・発表会

 学校や地域における防災教育の優れた取り組みを顕彰する「ぼうさい甲子園(1・17防災未来賞)」=毎日新聞社、兵庫県、(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構主催=の表彰式・発表会が10日、神戸市中央区の兵庫県公館で開かれた。

 今回で6回目。小・中・高・大学の4部門に計80団体が応募し、18団体が入賞した。この日はグランプリ・ぼうさい大賞・優秀賞の計8団体と、特別参加の兵庫県立舞子高と同県立佐用高の2校が、それぞれ活動を報告。防災教室の実演や被災地で実感した「助け合いの大切さ」などを訴え、会場に集まった約260人は真剣に聴き入っていた。

ぼうさい大賞・グランプリ 災害伝える新聞製作――水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊

水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊
 グランプリの「水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊」(山口県防府市)は、地元を襲った水害と向き合った今年度の活動を報告した。小学生中心のグループで、聴覚障害のある人と交流し、災害時に使える手話「ぼうさいサイン」を考案。「楽しい防災」をモットーに活動していた。

 昨年7月、多数の犠牲者を出す豪雨災害が発生。被災者を支援した地元のボランティアや専門家を取材、住民の心の傷を知り、災害を記録して語り継ぐ資料となる新聞と絵本を作った。防府市立小野小6年、石光七彩さん(12)は「これからも防災を学んでいく」と話し、同市立牟礼中3年、吉野智美さん(15)も「(災害時に)何もできなかった悲しみを胸に、世界に発信できる活動をする」と語った。【青木絵美】
ぼうさい大賞 水害地の復旧手伝う――徳島市津田中

徳島市津田中
 南海・東南海地震で津波被害が予想される徳島市津田中は今年度、2年生35人が地元校区で出前授業を行ったほか、夏休みに豪雨で被災した岡山県美作市に赴き、復旧作業にあたった。生徒たちは泥まみれになり、湿った畳やごみを運び出した。被災住民から感謝やねぎらいの言葉を受け、人が助け合う意味をかみしめたという。

 また、校区住民を対象に防災意識を調査。津田地域で想定される津波の高さはどれくらいか▽家族と安否確認方法を話し合っているか――。集計すると、住民の防災意識は高いが、知識が必ずしも正確でないことが分かった。発表会で2年の米田智輝さん(14)は「少しでも防災について考えてもらうことが大切」と報告した。【青木絵美】
ぼうさい大賞 インドネシア拠点――立命館大国際部国際協力学生実行委

立命館大学国際部国際協力学生実行委員会
 立命館大国際部国際協力学生実行委員会は、06年のジャワ島中部地震で被災し、学校法人立命館が再建したインドネシアの小学校を拠点に活動する。小学校のある人口約800人の村には地図がなかった。そこで地震によりがれきなどでふさがれる狭い道など危険個所を住民と一緒に調査。防災地図を作製し、公民館などに張り出した。昨年は子どもたちと一緒に、夜間の地震の際に懐中電灯替わりになる「手作りランプ」を、コップやつまようじなど身近な材料で作った。

 発表会では3年の古賀あすみさん(21)が「少しずつ、より実践的な防災対策に向け活動している」と報告した。3月には、子どもたちと一緒に避難訓練をする予定だ。【野田武】
ぼうさい大賞 津波の怖さ、模型で――岩手県立宮古工業高

岩手県立宮古工業高
 岩手県立宮古工業高のある宮古市は太平洋に面し、過去の津波で何度も大被害を受けた。発表は、津波の怖さを住民に伝えるため、機械科の3年生が製作した津波の発生模型について報告した。

 模型は05年度から製作が始まり、沿岸部6地区分が完成。装置を使って海側から波状に水を流し込み、沿岸に津波が押し寄せる状況を再現する。

 昨年は、同市の防災イベントで実演。山田町の沿岸地区の自治会でも住民を前に紹介した。1933年の昭和三陸地震では自宅が津波の被害を受けたという3年の川村将崇さん(17)は「津波はひとごとではない。地域の人も津波の怖さを思い出してほしい」。【遠藤孝康】
優秀賞 ヒマワリ、命を描く――アトリエ太陽の子

アトリエ太陽の子
 神戸市内8カ所で幼稚園児から高校生まで約400人が通う造形絵画教室を開く「アトリエ太陽の子」では昨年から、全国の子どもに「命のヒマワリ」を描いてもらう取り組みを始めたことを発表した。

 復興の象徴として、震災の犠牲者数と同じ6434本を描いてもらうことが目標。教室の生徒・児童だけでなく、昨夏の豪雨で被災した兵庫県佐用町の小学校などにも出向いたという。

 震災では教室に通っていた女児2人も犠牲になった。子どもたちが描いたヒマワリの絵に囲まれ、兵庫県立神戸高1年の角谷紀章さん(16)は壇上で、「神戸に住む者の使命として震災を風化させることなく伝え継いでいきたい」と誓った。【遠藤孝康】
優秀賞 避難先記す安否札――釜石市立釜石東中

釜石市立釜石東中
 「今年度は『助けられる人から助ける人へ』をテーマに活動した」。岩手県釜石市立釜石東中2年、菊池のどかさん(14)が落ち着いた声で報告する。例えば、名前と避難場所が分かる「安否札」を独自に作製。一緒に発表した2年、前川紘也さん(14)が、「これが私たちが作った安否札。避難する時、外からよく見えるところに張ってください」と、地元の高齢者らに配布した様子を再現した。

 また、応急処置で学んだ三角巾(きん)の使い方も披露。菊池さんが慣れた手つきで、1分もかからず、前川さんの頭に三角巾を巻き付けた。さらに地域の高齢者と作った防災ずきんを前川さんがかぶって見せるなど、視覚に訴えた発表に観客は体を乗り出して見つめていた。【玉木達也】
優秀賞 園児向けに紙芝居――兵庫県立淡路高

兵庫県立淡路高
 阪神大震災の震源に最も近い高校で知られる兵庫県立淡路高は、週2回の選択科目で取り組んだ防災学習の成果を披露した。発表会では、被災者への聞き取り調査を報告し、園児らへの啓発に使う紙芝居を実演した。

 紙芝居「ゴン太の地震が来たらどうするの」は、地震に遭った小熊のゴン太が仲間を助けに行く物語。2年の三光将之さん(16)は、地域住民107人に聞いた防災アンケートについて発表した。

 三光さんは、アンケートに応じてくれなかった人がいたことを明らかにしたうえで「つらい思いを抱えて、今も体験を話せない人がいる。そのこともしっかり受け止めて、地震の恐ろしさを語り継いでいきたい」と話していた。【平川哲也】
優秀賞 クイズで防災学ぶ――地球防災隊

地球防災隊
 地球防災隊は、兵庫県立舞子高の卒業生ら9人が08年に結成した大学生グループ。このうち4人は保育士を目指しており、紙芝居など園児たちを対象とした防災教材を開発した。神戸、奈良両市の3幼稚園で、楽しみながらできる防災教育を実践している。

 発表会では、地震が起きた時に頭をかばう仕草を取り入れた手遊びや、ネズミが主人公の防災紙芝居「ちゅーたとふしぎなメロンパン」を披露した。

 また、クイズも出題。「地震が起きるのは朝だけか?」との問題に、メンバーの浦井聖也さん(21)=甲南大4年=らが「手で○か×をつくってください」と会場に呼びかけ、正解者に紙のメダルを贈り、喝采(かっさい)が起きていた。【平川哲也】
特別参加 佐用や四川と交流――兵庫県立舞子高

兵庫県立舞子高
 昨年8月に豪雨被害を受けた兵庫県佐用町でボランティア活動をした県立舞子高は、当時の様子や学校の取り組みを特別発表した。2年の藤原麗生(れい)さん(17)は、被災で元気のなかった現地の小学生たちと遊んだことを紹介。住宅にたまった泥の除去作業が「水を含んだ土は重くて大変だった」と振り返った。

 3年の小島汀(おじまみぎわ)さん(18)は、中国・四川大地震の被災地を訪問し、阪神大震災被災地で生まれた歌「しあわせ運べるように」の中国語版を小学校で歌った経験を報告した。

 3年の松下美紅さん(18)が「これからも佐用や四川と交流を続けていきたい」と締めくくった。【野田武】
特別参加 古里思い行動する――兵庫県立佐用高

兵庫県立佐用高
 発表会に特別参加した兵庫県立佐用高は、昨年8月の台風9号豪雨により大きな被害を受けた地元・佐用町の様子や、生徒による復旧支援を紹介した。

 多くの犠牲者や行方不明者を出し、家屋も損壊するなど、町の風景は一変した。だが直後から、町内には復旧作業にあたる生徒の姿が見られるようになった。秋以降も、JR姫路駅前で募金活動をしたり、仮設住宅の住民を訪ねるなどして、古里のためにできることを考え続ける。

 「家族が病気で倒れたらじっとしていられないように、自然に体が動いた」と2年の田中輝さん(17)。「人が支え合って生きていくことを肌で感じた。人生の教訓として生かしたい」と壇上で力を込めた。【青木絵美】
講演 役立つ知識を紹介――河田恵昭・選考委員長

 選考委員長の河田恵昭・人と防災未来センター長は発表会の最後に、地震や洪水などの災害時に役立つ知識を紹介した。例えば、阪神大震災などで倒壊した2階建て木造住宅は、90%近くが1階から壊れたことを指摘。震災で兵庫県内の高齢化率は15%だったのに、死者の45%が高齢者だったのは、「多くの高齢者が1階で寝起きをしていたためだ」として、「絶対ではないが2階の方が安全と言える」と忠告した。

 また兵庫県佐用町の豪雨水害を踏まえ、大雨の中での夜間の外出や車の運転は控えることを推奨。地震後の津波は6時間以上続くこともあり、「その間は避難所でじっとしていなければ危ない」と警告した。【野田武】
発表者の声

 ◆立命館大2年、浅田修志さん(21)
 僕たちより年齢が下の子たちの取り組み発表を聞いて、面白いアイデアがたくさんあったし、自分たちももっとできるんじゃないかと励みになった。今後の活動に生かしていきたい。

 ◆兵庫県立淡路高2年、神林佑佳さん(17)
 幼いころ阪神大震災に遭い、たんすの下敷きになったところを両親に助けられたと聞いた。防災学習を通じて、この恐ろしさを誰かに伝えたいという思いが強くなった。

 ◆地球防災隊代表、河田のどかさん(22)=神戸学院大4年
 受賞できるとは思ってもみなかった。幼稚園の先生が手軽に利用できるよう改良した防災教材を使い、これからも防災の輪を広げていきたい。

 ◆徳島市津田中2年、中川亮佑さん(13)
 他団体では、海外など遠い地域に目を向けた発表もあったが、津田中の特徴は「地域ぐるみの『つながり』」が一番。表彰を受けて、防災活動へのやる気がまたわいている。

 ◆水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊、御園生由衣香さん(13)
 地元・山口県防府市での水害を忘れず、もしこの先、災害が起こった時には、アカザ隊が活躍できるよう、防災のことをもっと勉強していきたい。

 ◆兵庫県立佐用高2年、池田裕美さん(17)
 豪雨災害の時に我が家は断水したが、隣の家の人が井戸水を使わせてくださった。募金活動では、生徒会の前役員も積極的にかかわってくれて「人の助け合いってすごいな」と感じた。   

 ◆岩手県釜石市立釜石東中2年、前川紘也さん(14)
 発表はうまくできた。他の学校でも報告する機会があるので、多くの人に防災意識を高めてもらえるようがんばる。安否札以外に新しい防災道具も作りたい。

 ◆「アトリエ太陽の子」に通う鎌田彩那さん(10)=神戸市立本山第一小4年
 震災で亡くなった人の分も一生懸命に生きたいと思って描いたヒマワリ。早く6434本になってほしい。

 ◆岩手県立宮古工業高3年、大棒雄司さん(18)
 チリ地震での津波が岩手でも被害をもたらしたと知り驚いた。地元の人たちに過去の被害を伝え、危機意識を高めたい。(まとめ・玉木達也、宇田川仁美)
司会者 「頼もしさ感じた」――神戸学院大4年・越田雪子さん

越田雪子さん
 司会を務めた神戸学院大人文学部4年、越田雪子さん(22)は、大学2年から大学内の「防災・社会貢献ユニット」に参加している。

 市民救命士の資格を取得し、高校などで応急処置を指導したり、オリジナルの防災教材を使って出前授業に出かけるなど、防災活動に取り組んできた。卒業論文は、04年のスマトラ沖地震・津波被害のあった被災地に対し、日本のNGOがどのような復興支援をしているかを取り上げた。各団体の活動報告を聞いて「若い人たちも防災対策に十分貢献できるんだ」と頼もしさを感じたという。

 春からは地元・島根県で社会人1年生。「地元でも小学校などを訪ね、防災のために何か伝えられたらと思います」と張り切っている。【青木絵美】
関連イベント 避難方法など活発に議論

関連イベント
グループに分かれて、災害時の避難方法などについて話し合う参加者ら=青木絵美撮影
 ぼうさい甲子園の表彰式・発表会の前後には、神戸市内で防災関連のイベントが開かれ、入賞団体の子どもらも参加した。

 9日には、阪神大震災を語り合う「災害メモリアルKOBE2010」(実行委主催)が、「人と防災未来センター」(中央区)であり、語り部や防災教育に携わる指導者によるパネルディスカッションで、震災を経験していない人が増えることによる風化を懸念する声が上がった。

 市立長田中の樽本信浩教諭は「日常的に震災の教訓を伝えることが重要」とし、学校現場で「震災を知らない先生が赴任した際、伝えていける教材を作ることが必要」と話した。また、牧紀男・京都大准教授は「被災者の話を聞けなくなる日が来る。文章やビデオに残したり、話を直接、聞いた人がどう感じたのかを、残すことも大切だ」と指摘した。

 11日には、防災教育の普及などに取り組むNPO法人「さくらネット」(兵庫県西宮市、石井布紀子代表)が「JICA兵庫」(中央区)で、「子ども防災ワークショップinHYOGO」を開いた。ぼうさい甲子園の入賞団体の小、中学生ら約40人が参加した。

 グループに分かれて、地震や津波など災害時、被災者の安否確認や、要援護者を避難させる方法などを議論。家族や知人と連絡が取れない場合、「安否確認できるまで連絡し続けるべきだ」「避難所に入ってから探すのがいい」など、活発に意見を交わした。

 新聞紙を利用して非常時に使うスリッパ作りに取り組んだ山口県防府市立牟礼中3年、吉野智美さん(15)は「見た目は薄いが、しっかりしている。災害時に新聞紙がこういう形で役に立つとは」と感心していた。【植松晃一、南文枝】
パネル展示 命の象徴180枚

パネル展示
 発表会場の兵庫県公館では、入賞校7校がそれぞれ取り組みをまとめたパネルなど約200点を展示した。「アトリエ太陽の子」は水墨などを使ったヒマワリの絵(縦150センチ、横30センチ)180枚を飾り、観客の目を引いた=写真。

 ヒマワリの絵は、幼稚園児や小学生らが胸に手をあて心臓の音を聞き、命の大切さを感じながら描いたという。特に茎は人生に例え、無限の濃淡をもつ水墨を使っている。

 同アトリエ主宰の中嶋洋子さん(57)は「力強く伸びていくヒマワリは命の象徴。今は約2000枚だが、亡くなった6434人分のヒマワリを描きたい」と話す。この他の展示品には災害時に避難したことを示す、岩手県釜石市立釜石東中の安否札などがあった。【北浦静香、写真も】
2009年度受賞校・団体

【ぼうさい大賞】4点(うち1点はグランプリ)
水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊(山口県)=グランプリ
徳島市津田中
岩手県立宮古工業高
立命館大国際部国際協力学生実行委員会(京都市)

【優秀賞】4点
アトリエ太陽の子(神戸市)
岩手県釜石市立釜石東中
兵庫県立淡路高
地球防災隊(神戸市)

【奨励賞】6点
長野市立中条小
静岡県藤枝市立藤枝中央小PTA
和歌山県紀の川市立荒川中
愛知県立日進高
滋賀県立彦根工業高都市工学科
東北福祉大学生ボランティアサークル「Withボランティア」(仙台市)

【はばタン賞】3点
兵庫県芦屋市立精道小
宮城県丸森町立丸森東中
震災犠牲者聞き語り調査会(神戸市)

【だいじょうぶ賞】1点
大分県立佐伯豊南高生徒会
<写真は小松雄介、幾島健太郎撮影>
(2010年1月28日大阪朝刊掲載)