全国の取り組み(1)

2010年12月28日
 ◇きらり発信力

 学校や地域で取り組む防災教育・活動を顕彰する「ぼうさい甲子園(1・17防災未来賞)」(毎日新聞社、兵庫県、ひょうご震災記念21世紀研究機構主催)の表彰式と発表会が来月9日、神戸市中央区の兵庫県公館で開かれる。応募校の中からグランプリに決まった徳島市津田中など、災害を語り継ぎ、防災に生かそうとするユニークな取り組みを紹介する。
 また06年度グランプリ受賞校の兵庫県立舞子高は、今年豪雨災害に見舞われた鹿児島県・奄美大島を訪問し、現地の子どもたちと交流、発表会ではその経験を報告する。この交流の様子を現地取材し、リポートする。



 ◆特別報告
 ◇奄美に学ぶ「結いの心」--兵庫・舞子高

心をリラックスさせる方法を伝える舞子高生
心をリラックスさせる方法を伝える舞子高生=奄美市立東城小中学校で11月29日、石川勝義撮影
 阪神淡路大震災の教訓を生かし、全国で唯一、専門的な防災教育を実施している兵庫県立舞子高校(神戸市)環境防災科の生徒5人が11月28~30日、集中豪雨被害を10月に受けた鹿児島県奄美大島を訪れた。街頭に立つなどして集めた募金計43万円を島の学校に贈ったほか、09年の台風9号水害被災地の子どもたちからのメッセージも届けた。生徒たちは、奄美に根付く助け合いの精神「結いの心」を学び、ぼうさい甲子園表彰式・発表会で成果を発表する。
 鹿児島県によると、10月20日からの豪雨で、奄美大島では3人が死亡。徳之島を合わせて489棟が全半壊し、886棟が浸水被害を受けた。避難指示・勧告の対象は計1366世帯2822人に上った。
 生徒と一緒に訪れた奄美大島では、茶色い山肌があらわになった斜面があちこちに見られ、建物から取り除かれた土砂が道路脇などに積み上げられていた。島内の主要道路・国道58号は、土砂を取り除くための片側通行が目立った。住民の一人は「タンカン(かんきつ類の一種)畑が崩れてだめになった農家もあり、収入の減少なども深刻」と話した。
 生徒たちはまず、最も被害が大きかった住用町の奄美市立東城小中学校を訪問した。校庭が泥水に沈み、床上浸水。児童・生徒55人にけがはなかったが、初日の夜は道路冠水で帰宅できず、学校近くの施設で一晩を過ごした。災害1カ月後はトラウマや不便な生活からくるストレスに悩む例が多いとの研究結果があり、生徒は心を楽にするためのワークショップを企画した。
 心のケアに使われる紙芝居「かばくんの気持」を読み聞かせ、雨が怖かったりイライラするのは「普通ではない状況下での普通の状態」だと説明。お互いの肩に手を置いたり、体を弛緩(しかん)させてリラックスする方法も紹介した。東城中1年の吉村優樹君(12)は「水が校舎1階まで来たので今でも雨が怖いが、話を聞いてホッとした」と安堵(あんど)の表情を見せた。
建物などから取り除かれ道路脇に積まれた土砂
建物などから取り除かれ道路脇に積まれた土砂=奄美市住用町で11月29日午前、石川勝義撮影
 台風9号水害を体験した兵庫県佐用町の久崎小からは「泥は流しても流しても流れませんね」「笑顔で掃除を頑張って」などと書かれたメッセージ、同じ佐用町の幕山小からは児童の手作りぞうきんを託され、東城小中学校で寄贈した。
 島内全域から生徒が通う県立奄美高校では、登校できなかったり帰宅できずに友人宅や車中に泊まる生徒もいたという被災体験を、生徒会役員から聞き取った。
 奄美市住用支所では、自ら被災しながらも帰宅は1週間後だったという保健福祉担当職員や消防隊員、住民らから話を聞いた。職員らは、災害の多い奄美大島には「結いの心」が受け継がれており、住民同士が顔見知りで安否確認が順調に進んだと説明した。
 舞子高3年の三好萌さん(17)は「小学生に災害を思い出させないよう気を使ったが、笑顔で遊んでくれた。復興を頑張っている様子などを神戸の人たちに伝えたい」と話した。【石川勝義、写真も】


 ◆大賞

 ◇サミットで意見交換--愛媛・12歳教育推進事業実行委

「防災サミット」で、他校の取り組みに耳を傾ける児童ら=愛媛県西条市明屋敷の市役所で
 愛媛県西条市の12歳教育推進事業は、04年に西条市山間部で5人が死亡した土石流災害を教訓に、児童に防災力を高めてもらう目的で06年に始まった。事業を進める実行委員会は市内の10小学校の11教諭で構成される。
 事業は、西条市内の全25小学校の6年生全児童約1100人が対象で、「防災キャンプ」と「防災サミット」が軸。キャンプを通じて非常食の重要さを認識し、災害発生時の避難方法など災害から生き延びるために必要なことを学ぶ。また、通学路の危険箇所の確認をする「タウンウオッチング」や、地域のお年寄りから過去の災害事例などの聞き取り調査をする学校もある。
 今月に開かれた第2回防災サミットでは、24校の代表児童58人が参加。防災キャンプや各校独自の防災教育で学んだ成果を、「安全な避難方法を身に着けなければならない」「ライフラインが絶たれた場合を考えると、水なしで調理できる非常食が必要だ」などと発表した。
 一連の取り組みは今年度のぼうさい甲子園で小学生の部の「ぼうさい大賞」に輝く。西条市教委は「部活動や学習時間などで難しい面もあるが、中学生や他学年にも事業を広げたい」としている。


 ◆大賞

 ◇危険示す洪水ジオラマ--愛知・日進高

小学校で読み聞かせの出前授業をした手作り紙芝居(後方)や洪水ハザードジオラマを囲む県立日進高の生徒たち
小学校で読み聞かせの出前授業をした手作り紙芝居(後方)や洪水ハザードジオラマを囲む県立日進高の生徒たち=愛知県日進市の同校で
 天白川の源流地域にある愛知県立日進高校では、水害をテーマに取り組んだ。00年9月の「東海豪雨」から10年。悲惨な災害を忘れないようにとの思いで、市内の洪水ハザードジオラマや水害防止の紙芝居作りを行った。
 源流地域での清掃活動は、土地の保湿力が高まり洪水防止につながると知り、住民らと「天白川クリーンウォーキング」を行ったり、洪水の知識を深めるワークショップを開催するなど、地域との連携も大切にしている。防災リーダーとして、小学校への紙芝居読み聞かせの出前授業にも行く。ジオラマは11月の市民祭りに出展し、好評を得た。水害防止のキャラクターも制作中だ。  一連の活動は今回、高校生の部の「ぼうさい大賞」に選ばれた。3年生の塚本篤史さん(18)は「地域に貢献できてうれしい」と胸を張る。


.....................................................................................................................

 ◇101校・団体が応募

 今年の「ぼうさい甲子園」には小学生、中学生、高校生、大学生の4部門に計101校・団体が応募した。委員9人(委員長=河田恵昭・人と防災未来センター長)による選考があり、各部門の最優秀賞「ぼうさい大賞」4点(うち1点はグランプリ)と優秀賞4点、奨励賞6点、被災地での活動を対象にした「はばタン賞」3点、安心安全なまちづくりを目指す「だいじょうぶ」キャンペーンにちなみ防犯活動にも応用できる取り組みを対象にした「だいじょうぶ賞」1点が選ばれた。発表会の問い合わせは人と防災未来センター普及課(078・262・5060)。受賞校・団体は次の通り。


<ぼうさい大賞>

徳島市津田中=グランプリ、12歳教育推進事業実行委員会、愛知県立日進高、愛媛大防災情報研究センター<優秀賞>香川県丸亀市立城辰小、岩手県釜石市立釜石東中、兵庫県立佐用高、石川工業高等専門学校
<奨励賞>
長崎県南島原市立大野木場小学校、和歌山県印南町立印南中、静岡県牧之原市立相良中、三重県立津工高、岩手県立宮古工高、阪神淡路大震災「写真調べ学習」プロジェクト
<はばタン賞>
アトリエ太陽の子、松蔭高、神戸市立科学技術高<だいじょうぶ賞>三重県立聾学校
.....................................................................................................................
 この特集は堀江拓哉、矢島弓枝、深尾昭寛、高谷均が担当しました

(2010年12月28日毎日新聞大阪朝刊)