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ぼうさい大賞・岩手県立宮古工業高 「津波模型 子ども救う」

2013年1月15日

出前授業指導の教諭、3月定年 「役立った」
 大賞の岩手・宮古工を常連校に

 今年度のぼうさい甲子園で「ぼうさい大賞」を受賞した岩手県立宮古工業高。県内の沿岸地域の立体模型を作って地元の小中学校を回り、津波が沿岸部にどう押し寄せるかを視覚で訴え、普段の備えの重要性を説いてきた。その活動は東日本大震災で多くの子どもたちの命を救った。指導してきた山野目弘教諭(60)は3月に定年を迎える。神戸市の兵庫県公館で13日開かれた発表会で、取り組みを報告する教え子を温かい目で見守った。【吉田卓矢】

 山野目さんが小学2年の時、チリ地震津波が発生。同級生から、自宅が床上まで浸水した話を聞き、津波の恐ろしさを知った。05年春、沿岸地域に住む生徒5人に「津波をテーマに課題研究をしよう」と呼びかけ、「津波模型班」を作った。

 宮古湾周辺を1万1000分の1に縮尺した初めての模型(縦1・8メートル、横1・35メートル)は06年2月完成。津波発生装置を使って水を流すと、地区によって津波の大きさや襲ってくる向きが異なることが分かった。防災教育に役立ててもらおうと宮古市内の小中学校教員を招いて実演、各校での出前授業を提案した。

 津波模型班はその後も市内各地の模型を次々に製作。06年度に7件だった出前授業の件数は10年度には17件に増えた。同高はぼうさい甲子園でも常連で、過去に大賞1回、優秀賞1回、奨励賞2回を受賞した。

 東日本大震災では、同高の校舎にも津波が押し寄せ、1階部分ががれきや土砂で埋まった。発生時、外出していた山野目さんはすぐに自宅に戻り、母親と近所の人を連れて裏山に避難した。

 同高の生徒は全員無事だった。出前授業を毎年受けていた今年度グランプリ受賞校の同市立鍬ケ崎(くわがさき)小も犠牲者はいなかった。津波は同小の校庭まで達したが、児童らは高台に避難して助かった。山野目さんは「活動を続けてきてよかった」と実感した。一方で「もっと回っていればより多くの命を救えたのでは」との思いも消えない。

 山野目さんは「模型の作り方や実演方法なども普及させ、各地域に防災意識を根付かせたい」と話している。