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《講評》 毎日農業記録賞

◇地域の先頭に立って--角道謙一・中央審査委員長

   昨年来、世界的な食糧需給の逼迫(ひっぱく)と異常な価格高騰が起こり、洞爺湖サミットをはじめ数多くの首脳会議でも食糧、農業問題が世界的危機として大きく取り上げられました。食料自給率が先進国でも最低の40%で、最大の農産物輸入国である我が国では、食の安全、安心に対する消費者の厳しい目や、後継者不足、過疎の進行など農村と都市の格差の拡大問題があります。

 こうした中で今回の毎日農業記録賞には一般部門、高校生部門合わせて844編の熱心な応募がありました。  一般部門では、例年以上にベテラン男性の奮闘が目立ちました。  中央審査委員長賞になった吉本百合夫さんは、裸一貫農地も資金もない中から四十余年、悪戦苦闘を重ねながら自分の柑橘(かんきつ)経営を育てるばかりでなく、愛媛の将来を見据え大学や高校の若い実習生を受け入れている点もすばらしい。

 津軽で藍染めを復活させただけでなく地域振興にも力を入れる舩澤陸郎さん、ご夫婦でミカンの温室栽培に取り組んだ安岡賢之さん、そのご努力とご労苦に頭が下がります。一方、稲作に飛び込み、国際貢献活動まで始めた松本伊代さんの若さも輝いていました。

 さらに若い世代である高校生部門の作品にも、「農」と向き合うことで成長していく姿があふれていました。  中央審査委員長賞の佐野哲さんの丹波黒の品質向上プロジェクトは、地域の栽培農家と交流しながら低コストで収益増加につながる栽培方法の確立で、高校レベルをはるかに超える研究成果をきちんとまとめておられました。田尻和之さんの、お母さんと2人で地域の人に助けられながら牛を育ててゆこうとする作品には「人と人のつながりを大切にする」農業から「命の教育」を学ぶ姿が生き生きと描かれていました。

 危機に立つ食糧、農業、農村問題の解決には即効策はなく、現場で農業に取り組む方々や国民皆さんの長期にわたっての理解と協力が不可欠です。農業記録賞に寄せられた真摯(しんし)な報告や意見はそれに対する解答の助けになると思います。受賞者だけでなく応募された皆さんが地域の方々と一緒になり地域の先頭に立って21世紀の農業、農村を築きあげられることを審査委員一同切望しております。

■中央審査委員(順不同)

   ◆第2次審査委員
 角道謙一・農業者大学校名誉校長▽伊藤澄一・全国農業協同組合中央会常務理事▽大澤貫寿・東京農業大学学長▽見城美枝子・青森大学社会学部教授▽佐野幹男・全国農業高等学校長協会理事長▽菊池哲郎・毎日新聞社常務取締役主筆

 ◆第1次審査委員
 久保信春・全国農業協同組合中央会広報部長▽桑島寛之・全国農業協同組合連合会広報部長▽前田穣・全国共済農業協同組合連合会広報室長▽世古康・農林中央金庫広報部長▽広田勝己・毎日新聞東京本社地方部長▽白神潤一・同大阪本社地方部長▽岩松城・同西部本社編集局次長兼報道部長▽藤田健史・同中部本社編集制作総務兼報道センター室長▽渡辺雅春・同北海道支社報道部長