ホーム> イベント> 全国農業高校収穫祭2010

全国農業高校収穫祭2010

売る大切さ、実感

篠山産業高東雲校の生徒ら=東京都武蔵野市の東急百貨店吉祥寺店で11月20日、森田剛史撮影

 「全国農業高校収穫祭2010」が11月20、21日に、東京都武蔵野市の東急百貨店吉祥寺店北側広場で開かれた。参加は全国農業高等学校長協会加盟の33校で初開催の昨年と同じ学校数だったが、実習で作った農作物や加工品を持ち寄った学校は今回新たに北海道、山陰、四国も加わり、文字通り全国規模になった。会場で元気よく即売した生徒に、収穫祭や学校で学んだことや、今後いかに「農」や「食」にかかわっていきたいか、聞いた。【山田研、河嶋浩司、百武信幸、小野博宣】

愛媛大付属高の生徒ら=2010年11月20日、東京都武蔵野市で小野博宣撮影
買い物客でにぎわう会場=東京都武蔵野市で2010年11月20日、森田剛史撮影

◇接客は元気よく

 「とろろにして食べたらおいしかった」

 特産品をそろえた兵庫県立篠山産業高東雲校の販売ブース。昨年と同じ山の芋を買い求める客が続いた。「うれしい。自分たちが育てた作物を、また買ってもらえるのは」。3年の小川拓馬さんが声を弾ませた。

 同校は2年連続の参加だが、昨年は東京農業大に進学した卒業生が都立高生の応援を受けての販売だった。「それでは生徒に何も残らない」(上野弘和教諭)と、今回は午前5時2分発の始発電車に乗って生徒3人が上野教諭とともに来た。山の芋、黒大豆、小豆など販売品目は7種類。事前に東京・築地場外市場での相場も調べ、売値を決定。山の芋を使ったカレー、黒豆のクレープといったオリジナルレシピも用意した。

 山の芋を1キロずつ箱入りで売ったところ、「1個単位がいい」と客から注文がついた。丹波黒(大豆)は東京でも有名だったが、山の芋は「霧芋」という地元での呼び名で売ったところ都立高校の先生から「それでは分からないよ」とアドバイスされた。

 そんな2日間の販売体験を地元農家の人に伝えると、「ほう」とうなずかれた小川さん。「いいものを作る自信はあったが、これからは『買いやすいように』を考えなくては」

 小川さんはもう一つ、貴重な体験をした。参加校を対象にした「賞」選定メンバーに生徒代表の一人として加わり、全ブースを回っては、販売する生徒に「どうやって作った?」「工夫した点は?」などと質問。てきぱき答え、元気よく売っていた学校に高得点をつけた。そして、その地ならではのものを育て、売ることが大切だと改めて感じたという。


参加生徒に聞きました

 ◇温かい声に感激/将来、就農したい/食料自給率あげたい

 ◆青森県立五所川原農林高(リンゴ、米など=写真)2年、木村千尋さん(17)
 「商品のよさをきちんと伝えられないと、買ってもらえない。(『御所川原』種のリンゴで作った)まっかなジュースは試飲を勧め、特産品だと一生懸命説明した。授業で田植えをして、祖母の田んぼを手伝うようになった。農家が農業だけで暮らせるようになってほしい」

 ◆山形県立置賜農業高(米、紅大豆ワッフルなど)3年、梅津直杜(なおと)さん(18)
 「学校の米栽培は農薬を使わず、手押しの除草機を使うなど手間をかけ苦労したが、お客さんは食の安全性に関心が強く、安全だと売れると実感した。稲作農家を継ぎ、規模を大きくし、無農薬栽培にも取り組みたい」

 ◆栃木県立宇都宮白楊高(ナシ、キャベツなど)2年、中村涼花さん(17)
 「野菜をたくさん買い求める人が多くて驚いた。うれしかった。(高校で)たくさんの植物や動物に触れて、土をいじることが好きになった。一般の方にも自分で耕して自分で作る楽しさを分かってもらえたら」

 ◆群馬県立利根実業高(サツマイモ、シクラメンなど)2年、須藤権太郎さん(16)
 「どんどん売り込んでも、重いものはなかなか売れなかった。戦略を考えないといけないと実感。高校で出会った仲間と一緒に農業をやって、知恵を出し合い、工夫を重ねたい」

 ◆埼玉県立杉戸農業高(米、ジャム)3年、栗原彩香さん(18)
 「隣で売っていた高校のコシヒカリの人気はすごかった。(消費者は)目が肥えていると思った。(高校で)栽培を勉強して、育てる大変さと楽しさを味わえた。将来、就農できたらと思う」

 ◆千葉県立大網高(米、ミニトマトなど)2年、伊藤みゆきさん(17)
 「(客の列に)びっくりした。自分たちが作ったものをこれからも食べてほしい。(収穫祭に)また参加したいですね」

 ◆千葉県立鶴舞桜が丘高(サトイモ、シクラメンなど)2年、小深山真実さん(17)
 「いっぱい買ってくれてうれしい。実家は農家。農業はやりたくなかったが、卒業しても触れてみたいと思うようになった。いろいろな人に私たちの食材を届けられれば」

 ◆千葉県立清水高(パン、ジャムなど)3年、井上佳織さん(17)
 「味見を勧めると買ってくれた。特に枝豆入りパンは珍しかったのか、よく売れた。特徴を強調すると売れるみたい。将来、販売に生かしたい」

 ◆東京都立農芸高(ジャム、ダイコンなど)2年、小林優季(ゆうき)さん(17)
 「農芸のジャムを買いに来た、というお客さんがいてうれしかった。すぐ売り切れ、驚いた。なれるなら、パン屋さんか農家のお嫁さんになり、私がおいしいと思えるものを、いろんな人にも食べてもらいたい」

 ◆東京都立農業高(ダイコン、ケーキなど)3年、山本明日香さん(17)
 「いろんな学校が集まり、それぞれが特徴を持っていた。高校では、自分で作った野菜はこんなにおいしいのかと実感できた。カステラ製造業に就職する。知識を生かしたい」

 ◆東京都立園芸高(マーマレード、ジャム)2年、武田雄太さん(16)
  「人気に驚いた。高校の食品科では畑作も学んだ。イタリアンの料理人が目標なので、食材の選定に勉強したことを生かしたい」

 ◆東京都立農産高(ダイコン=写真、ジャムなど)3年、佐々木佑介さん(18)
 「東京ならではの練馬大根や小松菜などに人気があった。地場野菜に関心が高い。東京でも空いている土地を農地にするなどの工夫をして食料を作り出さないと。将来、北海道で農業をすることにもあこがれている」

 ◆東京都立瑞穂農芸高(卵、みそなど)3年、田中絢子(あやこ)さん(18)
 「お客にいろいろ聞いてもらい、興味を持ってもらえうれしかった。高校の食品研究部では、地元特産のお茶を使ったパンを作り、商品化に結び付いたが、そうした開発はおもしろかった。体で覚えたことを栄養士になって生かしたい」

 ◆神奈川県立相原高(ネギ、卵など)2年、菅原礼太郎さん(16)
 「農薬のことなどを聞かれた。農業も注目されているなと感じた。農業高校の教師になりたい。どうしたらもっと消費者が喜んでくれるのか、深く考えたい」

 ◆新潟県立新発田農業高(米、タケノコ水煮缶詰など)2年、権瓶(ごんぺい)育(いく)さん(17)
 「(東京の消費者は)すごく温かい。『あなたたちが作ったの?』と声をかけてくれて、売りやすかった。農業高校は暗いイメージかもしれないが、(参加校は)どこも明るく、良かったです。農業後継者が少ないと言われているが、若い人も積極的に取り組むようになっている。それを絶やさないで」

 ◆新潟県立長岡農業高(米、みそなど)3年、宮内将也さん(17)
 「全国の学校で取れるものが違う。刺激になった。農業にかかわる仕事に就くので、もっと若い人たちが関心を持てるようにしたい。食料自給率をあげたい」

 ◆島根県立出雲農林高(ヨーグルト、プレスハム)2年、加藤里佳さん(17)
 「(東京は)賞味期限などを気にする人が多く、値段にもシビアだと感じた。学校で牛を飼育している。牛がこんなにもかわいいとは思わなかった。牧場に就職したい」

 ◆愛媛大付属高(ミカン)3年、黒田拓也さん(18)
 「ミカン農家を継ぐために高校に入った。生産は知っていることが多いが、(収穫祭まで)消費者の声は聞くことはなかった。愛媛のミカンは有名だった。農家経営は成り立ちにくい。販売と流通の面で頑張らないと生き抜いていけない」


全国農業高校収穫祭2010

◇受賞校は次の通り
武蔵野商工会議所会頭賞=青森県立五所川原農林高
東京むさし農業協同組合代表理事組合長賞=東京都立農産高
全国農業高等学校長協会賞=神奈川県立相原高
毎日新聞社賞=千葉県立清水高
特別賞=兵庫県立篠山産業高東雲校
......................................................
●農作物、加工品を出した参加校
北海道 岩見沢農業(米、大豆、タマネギなど)
栃木  小山北桜(キウイフルーツ)
    真岡北陵(ニンジン、ブロッコリーなど)
    那須拓陽(軟白ネギ)
    矢板(リンゴ)
群馬  伊勢崎興陽(古代米)
千葉  多古(米)
静岡  静岡農業(ミカン缶詰)
岐阜  飛騨高山(ジャム、ジュース)
    加茂農林(ジャム)
福井  福井農林(ドレッシング、野菜ふりかけ)
大阪  園芸(ハチミツ)
和歌山 南部(梅干し、ジュースなど)
長崎  島原農業(スープ生姜めん)
......................................................
主催 毎日新聞社、全国農業高等学校長協会
後援 農林水産省、財団法人産業教育振興中央会
協力 全国農業協同組合中央会、武蔵野商工会議所
協賛 農協観光