認知症110番

昼夜逆転

≪ケース1≫
 別居している長男の嫁です。85歳の舅が大腸がんで入院している。物忘れがひどい上、現在は昼夜逆転で病院からの要望で夜付き添っていますが、夜中にベッドからおりて動き出します。毎日なのでどうしたらよいでしょうか。=大阪市・女性

≪ケース2≫
 82歳の姑は長男家族と同居していましたが、脳出血で入院、その後リハビリをしたが、ぼけの症状が進んだ。数日前から次男の家でみているが、夜寝ないで部屋の中を歩きガタガタするので家族が眠れずたまらない。根気よく相手をすると眠るがそうもいかない、眠剤を飲ませてもよいのだろうか。=東京・女性

≪ケース3≫
 83歳の母親と2人暮らし。転んで脳内出血で入院してからぼけがすすんだ。介護のため会社を退職し看ている。息子を自分の夫と間違えており、昼間はウトウトし、朝早くから起きて家に帰りたいと動き出す。=兵庫県・男性

【回答】生活にメリハリをもたせて

●周囲を悩ませ

 夜中は寝て昼間は起きて活動するのが普通の生活です。昼間はウトウトしているか、寝ていて真夜中ごろから起きて動き出し、一緒に生活している人が眠れず迷惑をかける状態を「昼夜逆転」と言います。痴呆の進行と共に動作も低下し寝たきり状態が続くと、更に知的機能も低下し睡眠と覚醒のパターンがずれて昼夜逆転が起こってきます。昼夜逆転は一緒に生活をする介護者や家族が寝ているのに安眠を妨げるため周囲の人を悩ませます。

 睡眠は浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を約90分のサイクルで交互に繰り返し、大脳皮質を休ませてリフレッシュさせているといわれています。快眠によってリフレッシュされた脳がすっきり目覚めて一日が始まっているのですが、このリズムがずれて介護者や家族との生活がずれ他の問題行動にもつながってきます。介護者は眠れず身体的にも精神的にも介護負担が大きくなって不調をきたす原因にもなっています。

 どのケースも入院がきっかけになっているようですが、ベッドに寝かせられ自分の意志では動くこともできず、時間や曜日の感覚がうすれ昼なのか夜なのかのはっきりした区別がつかなくなってしまったのではないでしょうか。たとえば、ひとり暮らしであったらどうでしょうか、何時に起きても寝ても問題にはなりませんが、一緒に生活をするから他者に迷惑がかかるのです。だからといってひとり暮らしがよいというのではありません。単調な生活の中に、寝るとき、起きた時の着替え、歯磨き、散歩などで生活にメリハリをもたせ、覚醒、睡眠のリズムをつける工夫が大切です。

 ケース1は入院中で夜間付き添っての介護ですが、病院だと寝巻きのままで過ごしているのだと思いますが、着替えや歯磨きヒゲ剃りなどで朝であること、日中は少し院内を歩いたり日光浴をなどで体を動かしたり、昔話で頭を使うなどして、なるべく日中は動きのある過ごし方を工夫できないでしょうか。テレビを見る場合も寝てみるのではなく座ってみたりテレビのある場所まで歩いて他の人と会話が持てる機会にするのもよいと思います。

 ケース2は、家が変わり落ち着かないことも考えられますが、眠れない様子のときは無理に寝てもらうのではなく少し砂糖を入れた温かい牛乳やハーブティなどでゆったりとし、楽しい思い出などでくつろぐ雰囲気をつくると落ち着く場合もあります。そんなゆとりなど考える余裕もないかもしれませんが、イライラして寝せようと思えば思うほど眠ってはくれない体験があります。

●共倒れ心配

 ケース3は、ぼけ症状が進み介護疲れで共倒れが心配です。介護して以前のような生活をと思っても、ぼけは病気ですから進みます。ひとりでかかえないで在宅サービスを利用することはいかがでしょうか。薬剤使用は医師の診断の結果、薬剤が必要であるならば使用することはいいですが、診断を受けないで眠剤を投与することはいけません。介護は本人も介護者もゆとりがないと日々の生活の継続は難しくなってきます。そのためには介護者の介護負担の軽減に社会資源を上手に活用して下さい。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学