認知症110番

おむつ交換

 80歳の義母と同居、重度の痴呆で、家の中をうろうろしたり、すぐに食べたことも忘れ「おなかがすいた」と言います。食事をきちんと摂った上に、飲み物やお菓子もかなり飲食します。今一番困っているのは、おむつ交換です。食べる量が多いせいか、排泄量も多いのです。尿量もかなりなもので、パンツタイプのおむつではもれてしまうため、フラットタイプのおむつとおむつカバーで対応しています。トイレに連れて行き、立位のままおむつ交換をするのですが、嫌がって動いたり、座りこんでしまうのでスムーズにいきません。トイレに連れて行くだけでも大変なことです。毎回汗だくになり、格闘しているようなものです。それでも、うまくいかずトイレだけでなく、衣類も汚れてしまい洗濯の山です。何かよい方法はないでしょうか、このままだと自分のほうが参ってしまいそうです。(山口県、長男の嫁、54歳)

【回答】プライド守る声かけを

 動きの激しい人のおむつ交換は、誰でもうまくいきません。介護者側はおむつ交換の意味を理解して行っているのですが、お母様はそのことが理解できないのです。なぜ、嫁がトイレに連れて行くのかさえわからないのです。おむつが濡れて気持ちが悪いことは分かっても、それをどのようにすればよいかは分かりません。ですから、トイレに連れて行くときは、トイレに行く理由が分かるように声をかけてみてはどうでしょうか。「トイレに行きましょうか」「気持ち悪いから替えましょうか」「着替えましょうか」「私がトイレに行きたいのですが、ついでにいっしょに行きませんか」など。そう話してトイレに行っても、ズボンを下ろすと「何をするか」などと言い、トイレ内に入ってもまだトイレの意味が分からない場合も多いです。

 誰にでもプライドはありますので、ズボンを下げられたりすると恥ずかしい気持ちもあると思います。プライドを傷つけない声かけを心がけたいものです。介護者としては、ゆとりがない状態だと思いますが、プライドを守る声かけをすることによってスムーズに動いてくれるほうがずっと短時間ですむと思いますし、双方にとって精神的にも安定します。いろいろな声かけをして様子を観察しましょう。

 例えば、立位での交換ということですので、トイレの安心できる場所につかまって立ってもらい、後ろから替えます。お母様に、「ちょっと手伝ってね、こっちの手でここを押さえてね」「次は、こっちを押さえてね」「ありがとう」「助かるわ」などと声をかけながら行ってはどうでしょうか。また、おむつという言葉にはよい感情を持たないと思いますので、パンツと言い換えるなどすると良いと思います。もちろん他の言葉でもかまいません。あるいは、おむつ交換時、テープ止めのオムツであれば、上着の後ろの裾に、おむつを洗濯ばさみで止めて行ったり、大切にしているものを持ってもらったりして関心をそらせるのも良いと思います。

 どの程度の失禁なのか分かりませんが、歩行ができるのですから、尿意や便意のサインを見逃さずにトイレに連れて行き、トイレに座って排泄しましょう。失敗することも多いと思いますが、すぐに片付けて何事もなかったようにして様子を見ることを繰り返しているうちに、トイレに行くことが習慣的になる場合もあるので工夫してみてはどうでしょうか。うまくいかない場合は、いろいろな種類のおむつを試してみましょう。1度でうまくいくとは限りませんので数回試すのも良いでしょう。パンツタイプのおむつと小さなパッド用のおむつとの併用もいかがでしょうか。濡れておむつが重くなると動きにくくなるので、小さなパッド用のおむつをこまめに替えることでおむつ交換が少なくなると思います。

 いずれにしても、排泄は1日に何回もしなければならない介助ですから、家族は大変だと思います。量も多く、臭いも強く、失敗したら片付ければよいと言われても、実際はそう簡単なことではありませんよね。しかし、多くの人が最期は排泄介助をしてもらうようになるのですから、今からどのようにしたら楽にできるかを体験しておくことも大事という視点でかかわると、違う考え方になると思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学