認知症110番

姑を引き取ったが‥‥

 1人暮らしをしていた姑(84歳)を1年前から引き取り同居しています。用介護度2で、ぼけの症状は中程度、着替えや歯磨き、入浴など声かけをしないとできません。それらは声をかければよいのですが、例えば、衣服などはしまい忘れて出したままにしておくと、全部着てしまいます。また、概ね午前1時から3時の間に何回もトイレに行き、終わると手を洗いに洗面所へ、そして再びトイレにという行為を繰り返しします。時間は20〜30分かかります。姑は1階、私たちは2階で寝ていますが、水の音やスリッパの音で目が覚めて寝付かれなくなってしまいます。ときにはベッドに戻って数分もたたないうちに繰り返しします。大声を出すわけでもないのですが、毎日では、睡眠不足になってしまいます。仕事を持っているので睡眠不足はこたえます。月〜金曜の夕方、訪問介護サービスを利用しています。(東京都、54歳、嫁)

【回答】睡眠を十分にとれる環境作りを最優先に

 睡眠の途中で起こされてしまうと、その後はなかなか寝付かれませんね。困っている状況がよく分かります。毎日のことですからさぞ大変なことと思います。

 しかし、お姑さんは自分で自分のことをしているのですから、他の人へ迷惑をかけているなどと思うはずもありません。生活の中での当たり前の行為で、急に始まったわけでもないようですので簡単に変えることは難しいかもしれません。夜間のこれら一連の行動は習慣化されているように思われます。

 お姑さんの日常生活は、どうなっているのでしょうか。月曜から金曜日までは日中は1人で準備されている昼食を食べているのだと思いますが、食事時間は決まっているのでしょうか。テレビを見ながら過ごしているのでしょうが、自分でチャンネルを回して積極的に番組を選んで見ているというより、テレビが常時ついている状態ではないでしょうか。テレビを見ながら居眠りをしていることも多いと思います。

 家での生活は、特にこれといったプログラムが決まっているわけではありませんから、自分のペースで気ままに過ごしていると思います。気ままに過ごせることはとてもよいことなのですが、余りにも自分のペースで過ごしてしまうため、生活のリズムが乱れてしまうおそれがあります。そのために昼食を決まった時間にとっているかどうかを、知ることが必要なのです。日中1人でどのように過ごしているか、その様子をそれとなく調べたり、昼食の量やお菓子の食べる量なども把握してみましょう。また、土曜や日曜日という一緒に過ごす日の状況なども参考にしましょう。

 どうしても1人で気ままに過ごしていると、行動範囲が狭くなり、体を動かさなくなってしまいがちですので、日中の過ごし方を工夫してはいかがでしょうか。週2〜3回はデイサービスを利用し日中の活動を増やして体を動かしたり、人との交流をすることで生活に刺激とリズムができると思われます。初めは、外に出ることをためらうかもしれませんが、職員たちは専門職ですから適切にかかわってくれますので、ケアマネジャーに相談してはいかがでしょうか。

 家のなかでの暮らしはどうしてもゆったりとして体を動かす機会も少なく、じっとテレビを見るだけで、体の機能も低下してしまうおそれがあります。体のバランスも崩れてしまいますので、日中体を動かす機会を作り、夜間は十分睡眠を取れるような生活が習慣化するとよいと思います。加齢と共に身体機能は衰えていくのですから、体を動かして少しでも衰えを先に延ばし、転倒の予防などにも配慮して元気に暮らすことが、家族が快適に暮らせる要因になると思います。

 介護する人が心身ともに健康でないと介護は続けられません。介護者でなくても睡眠不足は健康に影響を与えるものですから、睡眠を十分とれるような環境を作ることが最優先です。一緒にいるだけでストレスになっている場合が多いと思いますので、自分自身の気分転換を図ることをお勧めします。さまざまなサービスを上手に活用して手を抜くことができる部分は、手を抜いて自分の時間を作り、自分のために使いましょう。介護は長期間にわたると思われますので、自分が負担を感じることをできるだけ少なくすることが、介護を続けられるポイントだと思います 。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学