認知症110番

コミュニケーションのとり方

 近所に住んでいるので、姉が病院や買い物に行くときにみています。話の内容が理解しにくいようで、なるべくわかるように話すのですが、なかなか伝わらなく困っています。また、義兄の言っていることもわからなく、わかったふりをしているときも多々あります。もともと几帳面な性格だったので、きちんと言っていることを聞かなればと思い何回も聞き直しをすると、言っていることが変わってしまい、なにがいいたいのかわからなくなってしまいます。姉はその場の雰囲気から察すればいいのよというのですが、それでいいのかなと思ってしまいます。姉自身も会話が成り立っているとは思えずかなりストレスになっているようです。姉の介護負担をなんとか助けたいと思うのですが、だんだん気が重くなってきています。コミュニケーションのとり方はどうすればよいのでしょうか。(静岡県、義理の妹、66歳)

【回答】向き合って 伝えることを簡潔に

 コミュニケーションは暮していく基本だけに困りますよね、気苦労がよくわかります。コミュニケーションをとらないで黙っていたら、その場の雰囲気は耐え難い状況になってしまいます。一般的にとりとめもないように思える会話が、生活をしていく上では重要ですよね。なんでもないように思えるコミュニケーションであっても、話の流れを追いながら、自分の思っていることや考えをまとめて伝えています。 しかし、認知症の方は、コミュニケーションを図っている、その短時間であっても話の流れを追うことや、自分の考え方をまとめることが難しく、伝えたいことを整理して言うことができなくなっています。そのことを理解しておき、義兄さんが送っているメッセージを理解し、こちら側のメッセージを誤解されないように伝えることが大切です。

 コミュニケーションは、言葉だけではなく、動作や顔の表情、声のトーン、速さ、姿勢、視線などからも伝わります。認知症の人たちは言葉の理解が難しくなっていますが、言葉以外のものから受け取ります。理論でなく感情が大きな要素になります。これらのことを頭に入れてコミュニケーションを図ってみましょう。

 まず、義兄さんに近づいて、話をするためにそばにいることを気づいてもらいます。離れていると、それだけでもわからなく、自分に話しかけられていることも理解できません。近づくときは、ゆっくりした態度で接しましょう。急いでいると、その急いでいる気持ちが伝わって伝えようとするメッセージを受け入れるゆとりがありません。落ちついた気持ちになることを優先しましょう。

 次に、視線を合わせ、これからの話しが義兄さんに向けられていることをわかってもらいます。視線を外したり、注意をそらしたりすると自分に向けられていないと思ってしまいます。全神経を使って話しますよという姿勢が必要ですし、義兄さんに対しての礼儀でもあります。同様に、立って見下ろす位置ではなく、義兄さんが座っていれば横に座ったり、向き合って位置関係についての配慮をします。

 話す内容は、伝えることをシンプルにし、一度に一つの内容に話します。伝えられる内容が複数あると混乱してしまいます。たとえば、トイレをすましたとき、「手を洗いましょう」次に「手を拭きましょう」などと分けていうとわかりやすくなります。内容は直接的で短く簡単にし、はなし方はゆっくり、はっきりと語尾までいいます。声の調子は穏やかに、急いでいると、ついつい高い調子で早くなってしまいますが、伝えるメッセージよりもせかせかした感じを捉え、不安を感じてしまいます。

 その他に、不必要な音を取り除き気が散らないようにし、身振りや手振りを加え、義兄さんの表情などを観察し、伝わっているかどうかを判断しながら、笑顔で話しましょう。目の前にいるあなたのことがわからなくなったようであれば、義妹であることを言いながら、安心できるようにしましょう。認知症の方は、目の前にいる人がだれなのかがわからなくなり不穏になることがあります。

 以上のことに留意しながら、義兄さんが言おうとすることをわかりたいという気持ちで対応すれば、言葉そのものが伝わらなくても、心の会話はでき満足する思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学