75歳の母は一人暮らしをしています。父は30年前に亡くなり、農業をしながら娘の私(49歳)を育ててくれました。私は大学入学と同時に上京し、そのまま結婚し離れて暮しています。お盆やお正月は帰省し、親子関係は良いのですが、昨年くらいから、物忘れが目だってきたので、月に1回は帰省するようにしています。パートの仕事をしながら休みをやりくりし、広島へいっています。母を呼び寄せて一緒に暮したほうがよいと思うのですが、母は家を離れたくないというので困っています。引越しを機会に認知症が進むとも聞いていますので。(神奈川県、娘、49歳)
遠距離で介護をされているのですね。毎月帰ることは、お母様がどのように暮しているかを見ることで安心でもあるでしょうが、自分の家を留守にするために、いろいろと気遣いなどもあるでしょう。また、往復するための時間や費用、体の疲労など負担も大きいと思います。そうであっても、お互いが住み慣れたところで、自分たちの暮らしを続けていくことができることは、双方にとって現状では良い方法だと思います。
しかし、このままの状態がいつまで続くかがわからないところに不安があると思います。お母様は、今までの暮し方を引き続きしているので、生活をする上では特に困ったこともなく過ごしていると思います。近所には何十年もお付き合いをしてきた人たちがおり、土地を耕し、季節に応じて種を蒔き、苗を植え、育て収穫し、それらを保存したり、食べたり、収入源にしたりとすべてのプロセスを行なっているのですから、そのことが何よりも生きがいになっているのでしょう。そのことができているから元気なのではないでしょうか。近所の方のお世話になっている部分もあるでしょうが、長年暮してきて築いてきた人間関係と体で習得している体験が生活の基礎になっているのでしょうね。
あなたの家に呼び寄せた場合はどうでしょうか。今の暮し方ができるでしょうか、お母様がいつまで現状を保つことができるかわかりませんが、今はできているのですから、どうなるかわからない不安感を優先するのではなく、今のことを大切にし、これらが続いていく方法を考えてはいかがでしょうか。ご近所との関係がよいのであれば、ときどき様子を観察していただき、変化があったときは連絡をもらえるようにしておく。住んでいる地域にどのようなサービスがあるか情報収集したり、在宅介護支援センターや地域包括支援センターなどに相談するのもよいと思います。また、遠距離介護をしている人たちの会やブログなどもありますので、ヒントを得てはいかがでしょう。
今できていることを認め、見守りながら、社会資源を有効に活用していくことを考え、お母様や近所の方々と連絡を取り合いながら自分の健康や生活に支障がないようにしていくことが大切だと思います。
回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学