認知症110番

母の短期入所

 86歳の母と2人暮らしです。母は認知症で物忘れがひどいですが、声かけや一部介助によって日常生活は、それほど困ることはありません。娘の私は、仕事を持っているため、月曜日から金曜日までの5日間を訪問介護による夕食の調理と見守り、口腔ケア、服薬確認をお願いしているほか、デイサービスも週3回利用しています。先日、遠方の仕事で短期入所を1週間利用しましたが、母は落ち着かず職員の方々に迷惑をかけてしまいました。家に帰ってきてからは落ち着いているのですが、今後利用について考えてしまいました。でも、利用しないと泊まりの仕事や旅行にも行けなくなってしまうので考えてしまいます。(長野県、娘、60歳)

【回答】回数を増やしながら様子をみては

 お母様が、いつも家で安心して生活を送っておられるのは、あなたの対応がよいからでしょうね。お母様にとってはストレスがなくても、その分、あなたが、ストレスを抱えているのだと思います。たまの短期入所は、あなたの体や心の休息にはとても良いことです。

 今回、初めての利用で、お母様は知らない環境に突然置かれて不安になり、その不安を言葉では上手に表せず、大きな声を出すことなどによって自分の気持ちを表現されたのだと思います。あなたは施設に迷惑をかけたと思っておられるでしょうが、施設の職員は、認知症については理解していますので、そうは思っていませんし、どうかかわればよいか模索しながら対応しています。それが専門職としての役割です。むしろ、短期入所に不安を抱いているお母様にどのようにかかわったら、落ち着いて過ごしてもらえるかを一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

 初めて短期入所を利用される際、お母様にはどのように伝えられましたか。理解が困難になっておられるようですので、なぜ入所するのかなど理由を説明しないまま、施設を入所されると、突然環境が変わり、何が起こるのか、お母様が不安を抱くのは当然です。理由はわからなくても、何かが変わるのだという感じをもってもらうことで、初めは落ち着かなくても、しだいに職員の対応を受け入れるようになり、ときには混乱しても少しずつその環境に慣れていくと思います。そうはいっても、環境の変化で不安になっているのですから、その不安な気持ちが長期に及ばないように、初めは数日から利用するようにし、回数を増やしながら様子を見てはいかがでしょうか。家以外で泊まるとことが、当たり前の生活となるように、短期間での利用を定期的に繰り返しながら不安感を取り除いていきましょう。それでも初めのうちは混乱するでしょうが、やがてその環境に慣れていくと思います。

 お母様が施設で落ち着かなかったからといって、家でみようと思うことは避けましょう。あなたの息抜きができなくなってしまうからです。落ち着かないお母様を見ると、不憫でならない気持ちもわかりますが、これから先も介護は続きます。上手に自分の手から離すようにしましょう。それがお互いの精神的、身体的なバランスが保てる第一歩だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学