認知症110番

母の食事

 90歳の母と2人暮らし。長女の私は仕事を持っているため、母は週3回デイサービスに通い、月〜金曜日は訪問介護サービスを利用しています。デイサービスに行かない日は、母は一人で家にいます。時間の感覚があまりないようで、昼食とおやつを準備していくのですが、目の前に出すと同時に食べてしまいます。「お昼に食べてね」と念を押しても、「わかったわ」と返事はしますが、すぐに食べてしまいます。飲み物は好きではなく、あまり手をつけません。今、何時であるかくらいなら、わかるようなのですが、どうしたらよいのでしょうか。電話には出ないようにいってあるので、連絡はできません。(千葉県、娘、64歳)

【回答】夏に向け水分補給の配慮を

 お母様を一人置いて、仕事に行かなければならないあなたの気持ちは、よくわかります。気になっても、仕事には行かざるを得ず、不安な気持ちが広がっていくのだと思います。仕事中は没頭しているので気にならないでしょうが、仕事を終え帰りの道々、母はどうなっているのだろうか、倒れていないだろうかなどと不安で頭がいっぱいになるでしょうね。玄関のカギを開けるのももどかしく、顔を見てほっとするのではないかと思います。

 お母様は、何時であるか、時計を読むことはできても、その時間が何を意味するのか、どう自分が行動すればよいのかがつながらないのです。はたから見ると、時間がわかるのだから、午後12時になれば昼食を食べることはできるように思えますが、12時になったことと、目の前にある昼食とが結びつかないのです。言われたその時はわかっていても、時間が経ってしまうと、忘れてしまって目の前にある食べものを見て、「食べるもの」としてとらえ、行動してしまうのでしょう。

 でも、お昼を12時前に食べてしまっても、一日というトータルで考えると、食事を3食食べているのですから、全体量としては心配しなくてもよいのではないでしょうか。運動量も多くないようですから問題はないと思います。でも、水分は取っていただきたいですよね。特にこれからは夏に向かって、汗をかいたりしますので充分とっていただきたいと思います。高齢になると、のどの渇きが鈍くなる傾向がありますので、好きな飲み物を目の前に並べておき、「飲んでくださいね」と紙に書いておくのも一つの手かもしれません。スポーツドリンクもよいようですよ。仕事に出かける前や帰宅後、お母様に好きな飲み物を少し多めに飲んでもらうとよいでしょう。訪問介護のとき、ヘルパーさんに気をつけてもらうよう、お願いされたらどうでしょうか。

 心配して気にしてばかりでは、不安は増幅するばかりです。お母様の健康状態や表情を見て、元気そうでしたら「よし」としてはいかがでしょうか。きちんとしなければ、と考えてばかりでは、自分を責めることになりかねません。介護する人が健康で明るい気持ちでいることが一番大切です。休みの日などに一緒に3食をゆっくりと食べ、お茶などして気持ちを調整することでもよいのではないでしょうか。栄養なども気になって、あれもこれも食べて欲しいと思いがちですが、今まで慣れ親しんだ食べものが安心感を促進するように思えます。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学