認知症110番

兄弟との付き合い

 義母(81歳)と夫(次男)と私の3人暮らしです。義母は8人兄弟の長女で、しっかりもの。兄弟たちはよく集まっては仲良く過ごしていました。3年前から物忘れが目立ってきましたが、生活はできています。兄弟の家にもバスで出かけていましたが、1年前くらいから兄弟との付き合いが少なくなり、最近は皆無になってしまいました。気になって兄弟の一人に聞いたら、妹の孫の結婚式に平服で出席したことが原因であることがわかりました。私たちは夫婦共働きのため、兄弟との付き合いは義母任せだったのを後悔しています。どうすれば元のようになるでしょうか。(神奈川県、嫁、58歳)

【回答】失礼の事情を伝え、誤解の解消を

 義母さまは長女でもあり、もともとしっかりご兄弟を取りまとめてこられたのでしょうね。あなたとしては、安心して義母さまが好きなように日々過ごせればよいと思ってこられたのでしょう。しかしながら、最近、義母さまの様子をうかがっていると、なんとなく気になる点があり、振り返ってみると、ご兄弟とのお付き合いが以前に比べ急に少なくなっていることに気づいたわけですね。何が原因なのか思い当たるふしがないために、ご兄弟にそれとなく聞いてみたところ、どうやら結婚式という晴れの席に、普段着で出席したことが原因だったことがわかったわけですね。おそらく、ご兄弟や親戚から礼儀知らずと思われたのでしょう。義母さまは、そのことに対して自分では変だなと、他人が思うほど気づいてはいないと思います。それよりも晴れの舞台に出席し、ご兄弟や親戚とともに楽しいひと時を過ごせたことがうれしかったのではないでしょうか。

 あなたも、義母さまが日ごろからご兄弟とうまくお付き合いができていたので、結婚式に出席することを、何ら心配することもないくらい、義母さまは日常生活ができていたのでしょう。結婚式に出席できたということは、式の日時や会場がわかり、交通機関を利用して目的の場所にたどり着けたことがその証だと思います。しかし、結婚式という場にふさわしい服装に欠けていたことがまわりの人たちに、なんとなく違和感を持たせてしまったのではないでしょうか。

 気になって、ご兄弟にお聞きしてはじめてわかったわけですが、もう一度その時の事情をご兄弟に聞いてみてはいかがですか。また、最近、義母さまが物忘れが激しいために、結婚式にふさわしい服装を整えることができなかった事情を伝え、意図的に失礼をしたのではないこともわかってもらえるうよう話してみるのも一つの方法かも知れません。また、今後も物忘れが原因で同様のことが起きる可能性があることをご兄弟やご親戚に伝えながら、これからも従来通りのお付き合いを続けてもらえるよう、あなたからお話してみてはいかがでしょうか。あなただって義母さまの行動が理解しづらいことだってあるでしょう。兄弟たちには、わかってもらえないかも知れませんが、話をしておくだけで心に留めておいてくれるきっかけになるかも知れませんよ。

 義母さまは、友人や近所の方とのお付き合いもあるでしょうが、デイサービスなど在宅サービスの利用なども考えてみてはいかがでしょうか。日常での生活も、人との触れ合いを通じて気持ちに張りが出るようにすると同時に、日々の生活行動を観察しながら、どのような変化が起きているかを把握することからやってみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学