認知症110番

妻の変化

 77歳の妻と2人暮らしです。子どもは、車で2時間くらいのところに家庭をもっていて、1カ月に1回程度、来てくれます。最近子どもが「お母さんの料理の味付け変じゃない?」と言います。変だとは思っても「まずい」とも言えず、そのままにしていました。煮物を焦がしたり、火を着けずに鍋をかけることもあり、「年だから」と思っていましたが、子どもから言われて、やはり単なる物忘れだけではないのかと気になります。(埼玉県、夫、81歳)

【回答】将来の計画を考える第一歩に

 長年一緒に暮らしていると、日々の暮らしが連続しているため、変化があっても年を重ねると、こんなこともあるのだろうと、たとえ不都合なことがあっても容認してしまうのでしょうね。それは、夫であるあなたが優しく、少々味付けが変だと思っても、たまたま失敗したのだろうと妻の変化を寛大に受け入れていたからでしょうね。また、そのことが妻の変化を大きな変化にせずにいたのでしょう。

 しかし、お子様たちが「お母さんの味付けが変だ」と言ったり、煮物を焦がすこと、火をつけずに鍋をかけることは、客観的にみても、以前の妻に変化があると判断できるのではないでしょうか。年を重ねるにつれ、物忘れはあるものの、いままで続けてきた日常生活は支障なく継続できるものです。支障が出てきたということは、何らかの変化が起きたと考えられます。認知機能が低下して、いままで生活の中でできた家事ができなくなったのでしょう。

 一緒に生活していると、お互いに助け合い、補完してきたため不都合が生じなかったのでしょうが、改めて生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。朝起きた時の様子はどうですか。朝食の準備、後片付け、家の中の整理整頓、買い物、身の回りのことなど、面倒だからということではなく、何か以前と比べて緩慢になっていませんか。それと会話や表情はいかがですか。言葉も同じようなことの繰り返しはありませんか。そっと様子を見てみましょう。何か以前と違う気配が感じられるようでしたら、一度お医者さんの受診をお勧めします。日常生活の中で変だなと感じていることをメモしておいて見せるのもよいと思います。

 また、介護保険制度の申請やサービス利用など身近な情報も得ておきましょう。住んでいるところの広報紙や役所、近くの居宅介護保険事業所などを活用してみてはどうですか。ひとりで抱え込むのではなく、いろいろなサービスがありますので良い機会だと思って、これからの暮らし方を探ってください。サービスを受ける受け身ではなく、自分たちらしい生活ができるように、自分たちが中心になって考えていくことが重要なのです。2人で自分たちの将来の計画を立てる準備期間だと思うとともに、それを考えていくための一歩であり、必要な時であると考えましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学