認知症110番

母親を介護する息子の思い

 87歳の母と65歳の長男の二人暮らしです。母は5年前位から物忘れがあり、最近はお風呂に入っても体を洗わず、また時間も「もう出たらどう」と声をかけないといつまでも入っています。食べることやお茶を飲むことも声かけが必要です。先日お風呂をでる声かけが遅くなったら、上がったとたん倒れました。びっくりして救急車を呼んでしまいましたが、電話をかけ終わったとたん目を開けました。認知症であっても母は女性でもあり、洗身や着替え、風呂、トイレ介助などなんとなく抵抗を感じます。今後さらに手を貸すことが多くなるので気になります。(静岡県、65歳、男性)

【回答】「共に生活」喜びに感じて

 お母様の気持ちを大切になさってかかわっておられ、息子として現実の生活行為がスムーズにいかないことに気もちが揺れるのでしょうね。いつまでも母は母なのですが、認知機能が低下して、現実の行為の意味がわからなくなっている状態です。その状態が少しずつ進行していきます。いつもと変わらないように見えますが変化していきます。そのことを理解した上でお母様をフォローしていきましょう。

 お風呂に入る場合は、あらかじめ着る順序に沿って着替えを出しておき、入る前に好きな飲み物を飲んでいただき、水分不足にならないようにしておきます。浴室は滑らないように配慮し、シャワーいすに座って目の前に石鹸やスポンジなど使用するものを見えるように置きましょう。ドアの外から、お母さまが動けるように声をかけていきます。浴槽の出入りも声をかけましょう。長湯にならないように、温まったか、そろそろでたらどうかなど気分などを聞きながら上がっていただきましょう。その日の状態によって浴槽からの出入りの介助をしますが、出るときは疲れもあるので様子を観察しながら介助しましょう。着替えが終わったら飲み物を飲んでいただき一休みしましょう。お風呂はかなり体力や水分が消費されますので、水分不足にならないように気をつけましょう。のどの渇きが薄れてきているので、常に水分不足にならないように配慮が必要です。

 日々の生活では体に触れる介助が必要です。お母さまの気持ちを酌みながら介助することは基本ですが、息子への感情はあなたが思うのと差異がある場合もあります。基本はお母様が安心して生活ができることだと思います。異性に介助してもらうことは抵抗あるとは思いますが、かつて、母が息子を愛情をもって育てたように、他者の援助が必要になった母に、援助者として温かく優しく、援助される気持ちや援助する気持ちなど、複雑な気持ちを考えながらかかわっていきましょう。答えはこれですとは明快に言えませんが、悩みつつ、ときには喜びを感じながら共に生活できていることを受容し、社会資源であるサービスなどの情報を得ながら、これからのことを考えていきましょう。お母様の援助を通してあなたの生き方に幅ができてきたように思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学