認知症110番

お皿の数が多いと目移り

82歳の舅(しゅうと)と81歳の姑(しゅうとめ)、長男である夫と嫁の私の4人で暮らしています。夫は仕事で留守にすることが多く、妻の私が主に世話をしています。2人とも週2回デイサービスを利用しています。その他の日は一緒に過ごしているのですが、姑は物忘れが目立っていますが、声かけによりなんとか生活できていますが、最近、食事のとき、箸をもったままボーっとして時間ばかりがたって、ついつい「早く食べて」と言ってしまいます。お菓子など手渡しをすると食べるのですが、食べないと健康にもよくないし、食べることは楽しみでもあると思うのですが。(栃木県、嫁、57歳)

【回答】食べることに集中できる環境作り

 日常生活は普通に過ごされているのですね、食事について困っておられるようですが、体調など特に困る状態ではないようですので、食べる環境から考えていきましょう。手渡しのお菓子は食べているのですから、食べる動作や飲み込みに問題はないようですね。食事をするときテーブルの上はどのような状態ですか。すぐに使えるように調味料や嗜(し)好品などがでていませんか。主菜や副菜など皿数はいかがですか、皿数が多いと目移りがして、どれを食べようか迷ってしまいます。自分で選ぶことが難しい状態なのかもしれませんね。

 あなたは、食事をおいしく食べ楽しんでもらいたいと、いろいろ工夫されておられるのでしょうが、お姑さんはどれを食べてよいのかわからなくて、見ているだけで時間がたってしまうと思われます。選択することができにくいと考えて、これを食べてくださいと分かるようにしてはいかがでしょうか。たとえば、テーブルの上をすっきりさせて、食べるものがわかるようにする。あるいは一つにまとめてワンプレートにするのもよいと思います。これを食べるのだとはっきりとわかるようにすると迷わないのではないでしょうか。また、食べるときにテレビがついていたり、楽しく食べられるように話しかけたりすると、気持ちがそちらに向いてしまうので、食べることに集中できる環境作りにも配慮しましょう。自分で食べることはとても大切なことですから、お姑さんが自然に食べられる環境や雰囲気づくりを意識しましょう。

 体調がよいような時は、一緒に食事の準備や調理なども手伝ってもらうと、一連の流れで食べることもスムーズになることもあります。何もしないで時間だから食事へと場面が変わることの理解が難しいので、食事に関連した行為をする中で、食べることにつながるとよいと思いますが、調理など火を使う場合は危険も伴いますので注意が必要になります。

 食べることは生命の維持だけではなく、楽しいひと時でもありますので、どのような食べ方であっても、自分で食べることができれば良いと思うことが大切です。体を動かす機会をつくり、おなかがすくような生活の仕方や生活のリズムなどにも配慮し、お互いがゆったりとした気持ちでいられることがポイントだと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大学教授=介護福祉学