認知症110番

古くからの友人に異変

 82歳の友人のことですが、友人はひとり暮らしをしています。子どもはいません。私とは古くからの友人で近所に住んでいるので、いつも行き来をしています。最近、気になることがあるのですが他の人には言えません。連続テレビドラマの話をしても、分からない様子があったり、観劇に行ってもその場は楽しそうにしているのですが、帰りの電車で話題にすると浮かぬ顔をします。先日カード類が見つからないと言い、疑いをかけられても嫌なので遠ざかっています。(静岡県、女性、82歳)

【回答】健診と称し共に専門医受診を

 長年お付き合いをしてきた仲良しで、生活全般を見てきたから、最近の言動に違和感を感じておられるのでしょうね。周りからは特に日常生活では困っていないように見えるのでしょうが、一緒に行動しているから感じることなのです。だからと言って、直接あなたが友人に変だとは言えないでしょうし、また、言われた友人も何の事だかわからず、お互いに気まずい思いをすることになりかねません。

 友人は、認知機能の低下により物忘れがあり、そのことがいろいろな場面に影響していると思われます。生活は時間の流れとともに連続して積み重ねられています。友人は、連続ではなく、その時その時が点となっていて、点と点が独立していて、つながっていないのです。ですから、連続テレビドラマは、前回のことが連続していないので、今、目の前のことだけを見ているのです。つまり、点だけを見ているのです。その場その場はわかっていても、前のことと、今のことはつながらないので、一緒に会話しても、「あらっ、どうしたのかしら」とどこか変だなと感じるのだと思います。それも、時々会う人であれば違和感はありませんが、これまでの長いお付き合いがあるから、今までとは違うことを感じることができるのです。

 日々の生活は、同じことの繰り返しなのでできていると思われます。これまでは、何か困ることが起こりそうな場合は、あなたが上手にカバーしてきたから、困らないですんだのでしょう。カード類は連続が必要です。カードをしまった場所を思い出さないとできません。カードは大切なものだから、保管する場所も、意味があっておき場所を決めて保管したのでしょうが、その保管場所を思い出すことができず困っているのでしょう。あるはずのカードがないということは、だれかが盗ったと勘違いをされているのでしょうが、周りにいるあなたは、行動を理解できても気持ちは穏やかではないのが当然だと思います。

 この際、ひとり暮らしでもあるので、今後のことを考えて一緒に健康診断と言うことで専門外来を受診してはいかがでしょうか。さらに高齢でもあるので介護保険等も活用し、制度的なことの情報を得て一緒に考える機会にするのも一つの方法だと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学