認知症110番

サービス使わず妻を介護

 78歳の妻は認知症が進み言葉が少なくなっています。夫の私は80歳で、5年前から妻を介護しています。買い物に行くとかごに入れたものを見てうなずいたり、洗濯機やレンジの終了音に反応します。その音で私が動くと目で追う動作が見られます。買い物に外に連れ出すのも良い刺激になると思うのですが、変わってしまった妻を連れ出すのもどんなものか、サービスも使わず家で見ていますが、自分の体力を考えると不安も感じています。子どもは遠方なので頼れません。(埼玉県、男性、80歳)

【回答】介護保険利用で気分転換を

 複雑な気持ちと、反応によって癒やされておられるのでしょうね。奥様は家族のためにいろいろ貢献したことを夫のあなたは、妻にこれまでの感謝で温かく見守り介護されておられる姿が浮かびます。そういう気持ちがあっても、ご苦労がたくさんあったことでしょうし、これからも続いていくと思われます。これからを考える良いときだと思います。

 日々の生活では、言葉での会話はできなくても、表情や雰囲気から気持ちが伝わってきますね。かつて奥様が行っていた家事や買い物は、体験として残っています。ですから、品物をかごに入れたときや家電の音には反応を示すのでしょう。これは今の奥様にとって大切なコミュニケーションツールです。買い物の際、品物をかごに入れるとき、いくつかの品物を見せてどちらが良いか指をさしてもらうことも良いと思います。指をさした品物をかごに入れ、「ありがとう、助かるよ」など言葉で伝えると、笑顔が返ってくるときもあると思います。家の中でも同様に、洗濯機から洗濯物を出すとき、できれば奥様を洗濯機の場所までお連れして、一緒に洗濯物を出したり、干したりすることも良いと思います。一人で行った方が早いですが、一緒にすることで充足感にもつながるでしょう。

 変わってしまった奥様を外に連れ出すことを気にされておられますが、逆にお知り合いや近所の方にも状況を知ってもらい、何かの折には協力してもらえる関係づくりも大切だと思います。介護サービスですが、現在は利用していないようですが、これからのことを考えて、介護保険制度を利用することをお勧めします。今は使わなくても、いろいろなサービスがあり、利用によっては介護負担が少なくなると思います。現在はあなたが頑張っておられますが、あなた自身も少し奥様から離れて、ほんの少しでも自分だけの時間を作って息抜きすることが、これからも奥様と良い関係で介護ができる重要なポイントだと思います。自分自身の体力を維持するためにも、まずは自分の健康管理と気分転換できる機会を意識的につくりましょう。

 介護保険制度については、近くの介護保険事業所や地域包括支援センター、市町村の介護保険課等に連絡し、聞いてみましょう。あるいはインターネット、お子様にも聞いてみましょう。自分だけで解決しようと思わないことが良いことだと思いましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学