認知症110番

妻の行動がおかしい

 73歳の妻と二人暮らし、子どもはいません。70歳定年で家で過ごすことが多くなり、妻の行動が変だなと感じることが度々です。もともと口数の少ない妻ですが、会話もなく調理もいつも同じようなもので、総菜を買ってくることが多くなりました。洗濯物もしまわないで出しっぱなし。先日初めてバスツアーに行きました、トイレ休憩があり、妻はトイレに行ったのですがバスまで戻れませんでした。花を見ても感動している様子もなく、黙々と無表情で弁当を食べる横顔に今までと違う感じが……。(東京都、夫、70歳)

【回答】意識しながら観察を

 今までは仕事が優先で家のことには関心が薄かったのですね。定年になり時間が持てるようになり、これからご夫婦で楽しもうと会話を持つようにして、手始めにバスツアーに参加したのですね。そこで日頃からなんとなく今までの奥様とはなんか違うなあと感じていたものがトイレからバスに戻れないという状態を見て驚きと戸惑いで、このままでよいのか気になられたのでしょうね。たまたまバスがたくさんあり見つけられなかったのか、奥様に直接聞くわけにもいかず、日々の生活では今までと少しは変わっているものの暮らしそのものに支障があるわけでもないし、もともと口数の少ない奥様なので会話からは変化に気づけない状況にあったのだと思います。

 今まで奥様は滞りなく家事をなさってこられたのでしょう。食事もいろいろ気を使ってきたし、洗濯物の整理整頓もきちんとされてこられたと思います。そのことが今までのようにできなくなったということは、やはり奥様に何か変化が起こったと思うことが大切です。かばうのではなく、何ができないのか、日々の暮らしの中での変化を客観的に見てみましょう。奥様は毎日の生活はどのように過ごされていますか。朝の起床、着替え・身だしなみ、整髪やお化粧、歯磨き、食事の準備、食事の味付けやバランス、食事中の表情や食べ方、後片付け、洗濯や干し方・取り込み等など、まだまだ暮しにはたくさんあります。細かいようですが少し意識しながら観察して、今までとの違いを見てみましょう。日々の暮らしは習慣化されているので慣れでできるのが普通です。

 一方では、時間にゆとりができたのですから、奥様が家事をするときに「時間ができたので、この機会にいろいろなことを教えてほしい」と言葉を交わしながら手伝ったり、着替えたときの服装をほめたり、調理をほめたり、奥様の気持ちが温かくなるような言葉を積極的にかけてみましょう。買い物も一緒に行き、行動を共にするのもよいと思います。そして、この際お二人で健康診断を受けてみましょう。診断結果にかかわらず、地域の福祉サービスや相談窓口なども活用して、これからお二人がどのように暮らしていくかを考えていく機会にしましょう。自分たちらしく暮らしていく方向性を決めていくための良い機会だと捉えましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学