認知症110番

墓参りを忘れた姉

 83歳の姉は、訪問介護とデイサービスを利用し暮らしています。近所に住んでいる弟(私、73歳)が毎日訪問して世話しています。2人とも配偶者を亡くしひとり暮らしです。たまにはお墓参りをというので行くことにしました。電車にも乗るので、おしゃれをと思い箪笥の中を見ると衣類がぐちゃぐちゃで下着も薄汚れているのを見て、購入の必要性を感じたが女性物の買物は苦手です。お墓参りに行ったことも忘れている様子に驚き、これから先が急に不安になりました。(千葉県、男性、73歳)

【回答】上手にサービス活用を

お姉さまの世話を毎日されていると、それほどの変化には出会わず、毎日の流れで過ごされ、特に不安も感じずに淡々と過ぎてきたのでしょうね。お姉さまも着替えなど自分で行っているため、箪笥の中まで見ることもなかったのに、出かけることになり普段着から外出にふさわしい洋服を探すことで見えた事実に戸惑いを感じられたのでしょうね。その光景が手に取るようにわかります。いつもは何の変わりもなく続いているのに、気づかずにいたことへの驚きと不安が押し寄せてきて、この状態がさらに悪化していくのではないかと不安が増大していき、今までの暮らしが崩れてしまいそうになられたことでしょう。日々の生活は継続しているものですから、いつもの延長で過ごしていますし困ることも起こらない、少々の手違いなどが起こっても年のせいで過ぎてしまいます。そこに日常とは違う状態が起こって初めて、おかしいなあ、もしかしたら認知症かなあと感じ、感じるとまさかと思いながらも不安になり、今までは他人事のように思っていたことが自分に降りかかってきたことに気づき不安なのだと思います。

 訪問介護やデイサービスを利用しているので、在宅サービスについてはご存知だと思いますが、物忘れ外来などの受診についてケアマネジャーとも相談して現状がどの程度なのかを知ることも大切だと思います。サービスも認知症デイサービスや住んでいる自治体が認知症の人へのいろいろな対策を実施しているので、広報やケアマネジャーに聞いて、利用できるサービスは積極的に活用し、利用者の家族とも連携し気持ちにゆとりを持てるようにしましょう。あなたひとりで抱え込まないようにしてくださいね。

 衣類などの買物は、ネットショッピングや通信販売など、ある程度購入するものを見て選べるようにするのも一つの方法ですし、訪問介護サービスの外出支援で訪問介護員と一緒に出かけてほしいものを選びながら買い物を楽しむのもよいと思います。あなたがあれもこれもするのではなく、サービスを利用しながら、お姉さまの精神的な支えとして豊かな気持ちでフォローできるようにするとともに、お姉さまの暮らしを見ながら自分の将来も重ねていっていただきたい。誰もが年を重ねていきますので、身近に学ぶことができるのですからよい機会にしてくださいね。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学