認知症110番

年齢を聞かれ戸惑う母

 82歳の母はひとり暮らしです。父は7年前に他界、子どもは2人で長女の私と次女はそれぞれ車で30分くらいのところに住んでいます。時間を見つけて2人が買い物、掃除、外食、受診などをしています。最近、妹が何度か年齢を聞いたら少し戸惑っていたようで、生年月日はすぐに言えたが気になるというのです。特に生活に支障はないのですが、なんとなく活気がないのと、調理や洋服の着替えが少なくなっています。年齢相応の物忘れと思っていましたが気になります。(東京都、長女、57歳)

【回答】物忘れではないのかも

姉妹でお母様のお世話をして気にかけておられる姿とっても温かくてほほ笑ましいですね。この状態がいつまでも続くことが姉妹の願いでもあると思いますが、加齢は着実に現実化し悩みも出てくると思います。お二人がお母様の状態を話し合い、その都度適切に支えてきたので、親子ともども安心した生活ができていたのでしょうね。

 妹さんが気づかれた年齢が言えなかったことですが、生年月日は変わらないものですよね。しかし、年齢は毎年変化します。年齢は、出来事としてのエピソード記憶なので変化していきますので、年齢を正確に言えないことは単なる物忘れと思わない方が良いように思えます。すぐに言えなくても、少し時間をかければ言えるかどうかをみてください。生年月日はこれまで数えられないくらい言ってきたことですし変わることはありませんので、すぐに言えるのは当然で、生年月日と年齢を一緒にしない方が良いと思います。それとなく聞いてみて、その時の表情を観察してみましょう。

 年齢相応の物忘れという言葉はよく使われていますが、客観的に考えると、年齢によってどのくらいの物忘れを年齢相応というのか具体的な基準は明確になっていないまま、自然の摂理でそれぞれの感覚で判断しているのではないでしょうか。現在お母様は生活に支障がないのですから、少々の物忘れは年齢相応と判断してもよいと思いますが、今まで趣味として行っていたことに興味が薄れたり、家事や外出が少なくなったり、調理をする回数が少なくなり調理済みのものや総菜が多くなったり、おしゃれに興味がなくなったりと、今までに比べて変化が見られるような場合は、認知症の始まりかなと気にかけることも必要だと思います。

 年齢相応だと思ってフォローしていたことが、認知症の早期発見を遅らせてしまうことがないようにしたいですね。早期診断・早期治療は、認知症も同じで進行を遅らせます。医師の前ではきちんと答えられることが多いので、気になった日常のできごとをメモして受診すると医師も診断しやすいと思います。子どもにとって親が認知症ではないかと思いたくないのですが、早い診断で適切な対応をすることが安心して暮らせることにつながります。気軽に受診をするとともに、地域の情報なども知っておかれるとよいと思います。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学