認知症110番

定年後に生活乱れる夫

 67歳の夫と妻(65歳)の2人暮らしです。子ども2人は近県に住んでおり時々顔を見せに来てくれます。夫は2年前に定年になりました。それまでは仕事人間で忙しく働いてきたのですが、最近は気ままで、起床や睡眠時間、食事時間もバラバラで、時間に関係なくお酒を飲んだり、起きていても居眠りし、夜中に風呂に入ったりテレビをみたり、お菓子を食べ続けたり、外にも出ず生活が乱れ、物忘れも多くなってきました。このままでは認知症になってしまうのではと気になっています。(静岡県、妻、65歳)

【回答】同じ時間を共有し観察も

 仕事をしているときは仕事が最優先で時間に縛られ制約も大きく、家族と楽しむ時間もなく仕事人間でかなり自分の気持ちを抑えてご苦労されてきたのでしょうね。家族から見ると仕事で家庭も顧みない状態だったのでしょうが、ご主人は家族のためになさっていたのだと思います。現在は解放され自分の時間を満喫しているのでしょう。それでも短期間であれば周りも許容範囲と受け止められますが、長期間にわたってくると穏やかではありませんね。自宅で暮らすことの良い点は気ままに過ごせることで、それが心の安定や豊かさになり、本人主体の生活につながります。

 しかし、自由だからといってもある程度の生活リズムは大切です。外にも出ず生活リズムが乱れてくると体調にも変化が起きてきます。食事時間や就寝・起床時間は生活リズムの基本です。一般的な睡眠ですが、だいたい同じ時間に眠くなり同じ時間に目が覚めます、これは体内時計によって体温の変化やホルモンの分泌などが24時間周期で繰り返されるためです。この体内活動リズムを概日リズムといい、これが崩れると時差ぼけなどが起こります。ご主人の状態はこのリズムが乱れて、一定の時間が保たれていないように思います。夜間に睡眠が十分とれて、朝の目覚めが気持ち良いものであると、体も心も元気になり自然に生活リズムも整ってきますし、健康な生活を送ることにもつながります。

 いくら理屈でわかっていても、すぐに行動に移せるものではありませんから、ご主人の生活の中でできそうなことの時間を決めて、同じ時間に行うようにすることから始めながら理解力や行動、物忘れなどを観察してはいかがでしょうか。同時に今後の生活について一緒に、お住まいの広報紙などから情報を得て話し合い、催し物を探して参加を促すことも一つの方法だと思います。今までは仕事の時間に行動を合わせていたものを、自分たちの生活にシフトした時間をあなたが提案し意見を聞きながら、日中の活動が楽しくなるように、新たな趣味を探してみるのもよいと思います。想定していない楽しみや才能が見つかる可能性もあります。自分たちで模索しながら自分たちの暮らし方を創りあげましょう。意見が異なることも多々あると思いますが、否定しないで受け入れようとする気持ちで話し合いを重ねていきましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学