認知症110番

店を閉じ これから先が心配

 61歳の夫が先日認知症と診断されました。夫婦(妻65歳)で自営業をしていました。夫は2年ほど前から忘れることが多くなり、気になっていたものの、何とか頑張っていました。私が1年前に2か月入院した時も一人で店をやり、食事・洗濯もこなしていました。退院後は少しずつ手伝い、何とか店を切り盛りしていましたが、夫の物忘れが顕著になり、お客様からも不安の声が聞かれるようになり、今までの信用を大事にして、思い切って店を閉じました。開店から休みはお正月だけでした。これから先が心配です。(東京都、妻、65歳)

【回答】できること 共に楽しんで

 開店から休むこともなくお二人で頑張ってこられ、なぜこのようなことになってしまったのかと納得できない思いでいっぱいでしょうね。来る日も来る日もお客様のことを優先に考え、自分たちのことは後回しにして、休日どころか日々の休憩も惜しみ、当分の間はこの生活が続くと思って過ごして来られたのですね。ところが、物忘れが目立ってきたので病気かもしれないと思い受診をしたところ、まさかと思うような診断がなされ、どのように考えていけばよいか混乱の中で、仕事をやめるという苦渋の判断をされたのでしょう。

 診断については医師から詳細な説明があったと思います。はじめは、これまで真面目に仕事中心だったご主人が、どうして認知症なのか受け止めることはできない状態で、その後もなかなか受け入れがたかったと思います。あなたは認知症に対してどのように考えていますか。多分、本やインターネットからいろいろ情報を得たのではないでしょうか。情報によっては不安になったり、ホッとしたり複雑な気持ちだと思います。情報はとても大切です。

 しかし、日々の生活はお二人が紡いでいくのです。今までの生活は休むこともなく働いてきました、一生分働いたのではないでしょうか。これまで取れなかった休みをこれから二人でゆったりと過ごすのはいかがでしょうか。認知症だからと言ってわからないのではありません。場合によっては理解しにくい場面もありますが、気持ちは豊かです。何かをするときもあなたが一人で良かれと思って決めるのではなく、ご主人に説明し話し合いながら決めていきましょう。通り過ごしていたご主人の細やかな心の動きに改めて気づくことがあると思います。また、時には思うようにいかないこともあるでしょう、でも、それはだれにでもあることです。できないことに目を向けるのではなく、できることを共に楽しんでいきましょう。認知症と診断されても、あなたの御主人であることは変わりません。認知症の御主人ではなく、ご主人が認知症になっただけです。認知症という病気を理解し、少しかかわり方を工夫しましょう。

 住んでいる地域にはいろいろなサービスや催しがあります。積極的に参加し、他の方たちからもヒントを得て、一回限りの人生に、新たな一歩を踏み出しましょう、これから! これから!

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学