認知症110番

ご近所の指摘で母の変化を知って……

 86歳の母は私たち長男夫婦(長男64歳・妻63歳、共働き)と同居しています。定年が間近になってきたので今後について考えようと思っていた矢先、近所の方から、「最近お宅のお母さん少し変なのではないですか。玄関を何度も出たり入ったり、スーパーの前に長い時間立っていたり、その他にも……」。朝早くから夫婦は勤めに出ていってしまうので日中のことは分かりません。最近は食事の準備をせずにいたり、会話が少なくなったりしていましたが、年のせいだと思っていました。(神奈川、長男、64歳)

【回答】あるがままの状態を把握して

 ご近所の方からの情報にかなりの衝撃を感じたことと思います。長年一緒に生活していると、お互いに空気みたいな存在で、大きな変化でない限り、変化を変化として感じないまま過ごすのは至極当然なことです。定年を迎えることで、今後のことを考えようとしていたら、思ってもいなかった現実を聞かされ途方に暮れ、どうしたらいいか戸惑いと複雑な気持ちでいっぱいでしょうね。焦る気持ちも十分理解できますが、少し落ち着いて現実を見つめましょう。

 長男ご夫婦は共働きでお互い忙しく過ごされ、一方、お母様は日常的には何の不都合もなく過ごされていました。加齢と共にお母様の身体機能や認知機能は低下していたのでしょうが、日常生活の流れの中で少々困りそうな場合は、ご夫婦が当たり前のようにカバーしてこられたのではないでしょうか。それは自然なことで特別なことではないから、意識もせずに時が過ぎてきたと思われます。

 なぜ気づかなかったのか、早く気づいていれば現在のようにならなかったのではと思わずに、現在のあるがままのお母様の状態を把握しましょう。生活状況はどうか、何か困っていることはないか、食事やお風呂、洋服は季節にあったものを着ているか、髪の手入れやお化粧、歩き方や話し方、表情など、感情的にならずもう一度客観的に見てみましょう。以前のお母様と違う点はないか。違う点や気になることをメモしておき、今、受診している病院の物忘れ外来や認知症外来、なければ近くの病院を探して受診することをお勧めします。また、地域の地域包括支援センターを訪ね、相談してみてはいかがでしょうか。

 この機会に介護保険制度や地域の福祉状況、地域活動やボランティアがどのようになっているか、情報を集めたり、実際の場に足を運んでみたりしてみましょう。また、認知症に対しての理解や地域での取り組みなども併せて学び、今後、どのようにしていけばよいか、お母様だけではなくご自分の近い将来も視野に入れて考えてみましょう。その際、いろいろな人に出会うと思いますが、出会う人たちを大切にして連携できるようにしておき、わからないときは気軽に聞けるようにしておきましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学