認知症110番

同居の妹が認知症ではと心配

 67歳の妹と半年前から私の家で同居しています。2人とも独身で、それぞれ仕事を持ち近隣のマンションに住んでいました。妹は2年前に定年退職と同時にマンションを購入しましたが、鍵を忘れたり部屋が分からなくなったりして私の部屋に度々来るようになり、しばらくすると外出や食事もしなくなりました。そこで同居を始めたのですが、一緒に散歩や買い物、調理をするときもボーッとしていることが多く、連続ドラマを見ても話の筋を追えないことがあります。認知症ではないかと心配しています。(姉、69歳)

【回答】本人の意思を尊重し受診を

 お仕事をされていた時は活発でいきいきされていたのに、退職後は徐々に物忘れが目立ち、以前からは想像もできない状態の妹さんに不安を感じて同居されたのですね。一緒に暮らしてみると、日々の生活においても変だなあと思うことがしばしばあり、単なる退職後の解放感ではなく、このままでは認知症になってしまうのではないかと考え、姉としてどうかかわればいいか心配になられたのでしょう。

 妹さんは定年まで真面目に働き、老後に備えてマンションを購入し、これから楽しんでいこうと考えておられたのでしょうね。

 それが仕事から解放され、これまでとは異なる時間の流れ、新たなマンションの今までと違う間取りや雰囲気などに戸惑われたのかもしれません。外出から戻ると、今までなら何の障害にもならなかったことがスムーズにできないどころか、自分の部屋にすらたどり着けないというのは、かなりの精神的ダメージになっているのではないでしょうか。できないことへのいらだちと不安が増大し、自分ではどうしようもない焦りや精神的な疲れ、喪失感などが重なって困惑されていると思います。

 同居するあなたが次々目のあたりにしている妹さんの変化を踏まえると、あなたが病気だと捉えるのも無理はありません。認知症なのか、精神的なものなのか、かかりつけ医がいるなら相談し、いないなら物忘れ外来や病院の精神科に早く受診することをお勧めします。

 その際は、日常の生活状況がわかるようにメモをして医師に渡すといいと思います。妹さんは受診を拒否するかもしれませんが、穏やかな時に「今後楽しく一緒に暮らしていくため、まずは2人一緒に健康診断から始めようよ」などと誘ってみてはどうでしょう。嫌がるようなら無理はせず、話せそうな時を見つけて話し合ってください。妹さん自身も「最近変だなあ」と感じていると思いますので、慎重に誘ってください。多分この受診の誘いがこれからの生活を左右する第一歩になると思われます。簡単に受診に結びつかないことも念頭に置いて、決して焦らずにね。

 日常生活では、おかしいと思える言動でも危険でなければ注意せず、プライドを傷つけないように配慮してください。時間がかかっても妹さんの意思を尊重し、会話をする機会をたくさん持ちましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学