認知症110番

変わった母の言動にイライラ

 79歳の母は私(長女)と2人暮らしです。私は最近退職して母と一緒にいる時間が長くなり、母の言動が今までと違うことに気付いて不安になりました。長年飼っていた犬が数か月前に亡くなり、日課だった散歩がなくなって家の中で過ごすことが多くなりました。ポストから取り出した郵便物や新聞をどこに置いたか分からなくなったり、お風呂を沸かす時間帯や簡単な調理に戸惑ったり。本も読まなくなった母の今までとは違う姿につい叱責してしまい、おろおろする姿を見ると更に怒りが増してきます。(長女、55歳)

【回答】生活リズムを作って

 今まではお仕事でお母様の日常がそれほど気にならなかったのに、退職され一緒に過ごされる時間が増え、日々目の前で言動に接するようになったため気になる機会が多くなったのですね。以前から兆候はあったものの、気づかなかったのかもしれません。

 新型コロナウイルスの影響で外に出にくくなったこと、人との触れ合いや会話が減り、更に長年飼っていた愛犬の散歩もなくなったのですから影響はあったと思われます。特にかわいがっていた愛犬の死はかなりの喪失感があったでしょう。定時に行っていた散歩や種々の世話が突然なくなってしまったのですから、日々の生活に多大な影響が出たと思います。一日の時間の過ごし方、生活リズムの変化で時間軸がぶれてしまい、どのように過ごしていいのかお母様自身も戸惑っておられるのではないでしょうか。

 お風呂の件は、時間帯が分からないながらも、あなたが入れるようにと思いながら沸かしているのではないでしょうか。郵便に関しても「なくしてはいけない」と思いどこかに保管しているのだと思います。あなたにすればそれらの行動は的外れでイライラの原因になっているのでしょう。

 あなたが仕事をなさっていた時は、お母様の行動が一部分しか見えなかったけれど、今はすべて見えるためにより気になることが増えたとも考えられます。とはいえ、お母様は徐々に日常生活に不都合な部分が出始め、そこにいつも一緒にいた愛犬が突然死んだことは加速度的に日常生活の混乱を招いたと思います。今までの生活リズムが一変したことで、日々の生活をコントロールできなくなり、急変した環境変化に適切に対応できずに混乱状態の中で過ごされているのではないでしょうか。

 生活リズムはとても大切です。そのことを考慮して、様子を見ながら声をかけ、理解できているか、理解できないところはどんな場合なのかを観察してみましょう。

 そのうえで、一定の生活リズムができているのかを確かめ、状況を見ながら認知症外来の受診、近くにある地域包括支援センターや市区町村の広報誌、ホームページ等から情報を得てください。お二人が安心できる環境作りをし、お母様の変化に対応しつつ自分も有意義に過ごせるようにすることを考えましょう。お母様に重点を置きすぎないように、共に心地よい生活リズムを試行錯誤しながら作ってみましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学