認知症110番

認知症の夫と店を続けるべきか

 66歳の認知症の夫と妻(65歳)の二人暮らしです。自宅近くの店舗で自営業をしています。夫は1年前くらいから忘れることが多く仕事に支障が出てくるようになりました。私が主になって一緒に仕事を続けています。時々、先々のことを考えて閉めようかと思うこともありますが、何とか出来ているうちは続けようかと悩んでいます。子どもや友人からは介護保険の認定を受けたら、とか今後のことを真剣に考えたら、と言われています。イライラすることもありますが夫のことを受け入れながら過ごすのは無謀でしょうか。(妻、65歳)

【回答】現状を大切にし、様子を見て

 生活をしていくと予想できないさまざまなことが起こってきます。夫婦で仕事を営み、夫の物忘れで仕事に支障が出てきて不安はあるけれども、あなたがフォローすることで仕事が継続できているのですね。それはあなたの努力の賜物だと思います。

 その状況があなたにとってかなりの負担で心身が崩壊してしまいそうというのであれば、お店を閉めることを視野に入れる必要があるかと思います。しかし、今はなんとか夫も一緒に働けている現状を大切にされることが最善なのではないでしょうか。まだ年齢も若く、これから先のことはあなたがおっしゃるように様子を見ながら考えていくのが良いと思います。

 認知症は病気ですが、人によって症状や進行は異なります。「認知症の夫」という特別な見方ではなく、「特別な配慮が必要な夫」という視点で関わると良いと思います。受診は定期的にされ、状態の変化を観察して夫の言動を受け入れつつ、できそうなことをやってもらい、そのたびに感謝の言葉をかけて気持ちの安定を図るようにしましょう。

 できない場合はプライドを傷つけないように声をかけましょう。仕事と夫への配慮で、あなたがイライラするのは当然です。あなた自身が気分転換できる方法で解消しましょう。無理して我慢が重ならないように自分なりの解消法を見つけてください。周囲の目は気にせずにしてください。

 お子様や友人からのアドバイスは、あなたが倒れてしまうのではないかと気遣ってのことと思います。あなたが負担を感じるようになったら、介護保険のサービスや自治体のサービスなどを利用することも考えましょう。介護保険は申請から始まりますが、申請から約1か月で要介護度が認定され、サービスを利用できるようになりますので、申請は必要になってからでもよいと思います。

 今は情報が得やすい時代で、情報があふれていることも確かです。自分に必要な情報を取捨選択しながら、一人で抱え込まないようにしましょう。自分の時間を作りリラックスし、時には自分の頑張りに自分へのご褒美をあげましょう。まだまだこれからの人生は長いです。息切れせず、お二人が笑顔で過ごせるように、お二人とも自分らしく過ごせるよう模索しながら歩んでいけるようにしましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学