認知症110番

友人と会えず毎日が空虚

 一人暮らしの女性です。65歳で定年、その後仲良しの友人と3人で旅行や観劇、食事会と毎月楽しんで過ごしていましたが、1年前に友人が急逝しました。2人で同じように過ごしていたところ、今度はその友人が体調を崩して会う機会が減りました。毎日空虚な感じで、最近は物忘れが目立ちます。自分でも何とかしないと、と思うのですが、一向にやる気が起きず、怠惰な生活をしています。分譲マンションに住んでおり、趣味もなく、近隣の方ともあいさつ程度で話はしません。認知症になりかけているのではと不安です。(73歳)

【回答】興味ある催しに顔を出して

 定年後は仲良し3人で充実された時間を過ごしておられたのですね。仕事から解放され今までできなかったことを3人で意気投合して実践され、時には老後のことも話し合われていたのでしょう。

 それがしばらくは続くと思っていたところに状況が急変し、戸惑っておられると思います。このような状況になると気持ちの整理ができないばかりか、空虚な気持ちになり、何もする気が起こらず憔悴(しょうすい)状態になると思います。時間の経過とともに新たな自分らしい生活ができるように、身の回りのことからゆっくり行動されるとよいと思います。

 元気で1人暮らしをされている現状では不都合は感じていないと思いますが、これから先のことを考えて、入院や万が一の場合に相談できる人、引受人になってくださる人を決めておきましょう。身内の方でもいいし、成年後見制度もあります。後見人制度は相談窓口などがありますので調べてみましょう。早急に決めるというのではなく、自分がどのように暮らしていきたいかを大まかに描きいろいろな場面を想定して前向きに考えてみましょう。

 日々の生活は、朝、昼、夕と緩やかに食事時間を決め、起床時は朝の太陽と新鮮な空気を浴び、日中は行動的に、夜はのんびりするなどざっくりとした内容で構いません。ただ毎日家の中で過ごすのではなく、外に出る用事を作り、活動的に過ごしましょう。地域や市区町村で発行している広報紙などにはさまざまな活動やサークル紹介、ボランティア活動などがたくさん掲載されています。興味があるものに顔を出して雰囲気など味わってみましょう。

 また、近くの公民館や体育館、図書館、福祉施設などでもいろいろな活動が行われています。はじめは近寄り難いかもしれませんが、少し顔を出してみると、自分には向かないと思っていたことが「このくらいならやれるかも」という気持ちになることもあります。最初から頑張ろう、ではなく、試しに参加するくらいの軽い気持ちで見学してみましょう。

 大げさかもしれませんが、今まで眠っていた才能が引き出されることもあります。嫌いだと思っていたことも参加してみると思っていたよりもすんなり溶けこんで楽しくなることもあります。まずは興味を持ったことに足を踏み入れてはいかがでしょうか。無理をせず居心地がいいところを探し、周りの人と話をする機会を作ってみましょう。第一歩を踏み出すと、新たな世界が待っていますよ。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学