認知症110番

独居の母の自宅がごみ屋敷に

 75歳の母は、3年前に父(80歳)が特別養護老人ホームに入所してから独り暮らしです。長男の私は遠方に住んでいて毎日電話で体調など確認していましたが、新型コロナウイルス症も5類になったため、家を訪ねました。電話の様子から何とか生活しているのだろうと思いながら玄関を開けると異臭がし、室内は散乱というよりごみの山、想像もしていなかったので息が止まるかと思うほど驚きました。すぐに父の時のケアマネジャーに連絡し今後のことを相談しましたが、実家に戻って介護をしなければと不安でいっぱいです。(46歳)

【回答】状態把握しサービスを活用

 コロナ禍の影響も和らぎ、気になってお母様を訪ねると、想像できないほどの状態に言葉も出ず呆然(ぼうぜん)とされたことでしょう。毎日電話では何となく生活ができているように思えたけれど現実は予想外で、電話での状態把握は何だったのだろう、と判断ミスに自信が失せ、自分自身を責め、落胆なさったと思います。まさか数年でお母様がこのような状態になるとは予想もできなかったと思います。毎日電話で安否確認をしていたにもかかわらず想像できないでいたことに責任を感じ、また先行きに不安がいっぱいとなり、「すぐにでもお母様のところに引っ越しをしないといけない」と思われたのではないでしょうか。

 動転する中で、ケアマネジャーに相談したことは適切な対応だったと思います。早急にケアマネが介護サービスの利用などを調整してくれると思います。

 一方であなたは、お母様の状態把握をしましょう。具体的に、食事に関して買物はできるか、調理したものを買ってきて食べているのか、それとも自分で調理するのか、調理はどの程度できるのか、レンジは使えるか、冷蔵庫の中のものは賞味期限が過ぎていないか、後片付けや台所の掃除、ごみの分類やごみ出しなど、細かいようですが、何ができて何ができないかを確認しましょう。

 トイレやお風呂の清潔さはどうか、衣類は季節のものを着ているか、洗濯の状況、衣類の整理、寝具類は季節にあっているか、エアコンは使用しているか、人とのおつきあい、金銭管理なども点検してください。さらに日々困っていることは何かを把握し、ケアマネジャーにも伝え、どのようなサービスを利用すればお母様が安心してお一人でも暮らせるか、お母様の意見も聞き、多様なサービスを利用ながら独り暮らしを続けられるように考えましょう。遠方にいる家族向けの見守りサービス、見守りカメラなどもあります。活用方法を調べてみましょう。

 あなたはお母様の生活を心配するあまり、すぐに実家に帰って介護しようと思っているようですが、あなたにはあなたの生活があり、ご家族にはご家族の考えがあると思います。お母様の介護で誰かが犠牲になると、不満やストレスで介護は長続きしません。期限が分かるとそれをめどに頑張ることもできますが、介護はいつ終わるか分かりません。日々誰もが気持ちよく暮らせるようになることを優先して考えましょう。

回答者 是枝祥子(これえださちこ)
大妻女子大名誉教授=介護福祉学