読んでみた

忘れんぼさんへのマナー

ジョアン・サウアーズ著、長澤あかね訳/1300円+税/扶桑社(03・6368・8864)

 オーストラリア在住の女性脚本家が、自分と夫の二人の父親の認知症から学んだ介護のアイデアと、「すべきこと」「してはいけないこと」を優しく教えてくれる。といっても上から目線の指導的な語り口ではなく、良識とユーモア、愛がバランスよく溶け合い、スッと心に響いてくることだろう。

 たとえば「そのひとがなにを経験しているか理解したいなら、想像してみよう。毎日知らない家に連れていかれて、見ず知らずの人たちに囲まれているって。だから、優しくしてあげて」と認知症の人の気持ちに寄り添う。逆に世話する人には「もうがまんできない!と思ったら、トイレの中で、タオルを口に当てて叫ぼう。そのあと、お酒を1杯飲むといいよ」とアドバイスする。詩のようにつづられた言葉が、ユーモラスなゾウの挿絵と共にこわばった心を解きほぐす。