読んでみた

ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信

生井久美子著/本体1500円+税/朝日新聞出版(03・5540・7793)

 認知症の人が行方不明になった時、よく使われる「徘徊(はいかい)」という言葉は認知症の本人からは不評で「外出行動」に置き換えることがある。本人からすれば目的をもって外出しているので、管理の目線を感じる「徘徊」は似合わない。さらに「行動」も不要で「外出」と呼ぶのが実感とという。

 認知症になったら何もわからなくなる、と言われてきたこの病気の実像が徐々に明らかになってきた。本書は23年前から認知症の取材を続けてきた著者が、自ら語り出した本人たちを外国まで訪ね歩き、偏見に苦しみながらも自信をつけ、本人同士がつながり、発信していく姿を生き生きと紹介している。

 「私の使命は、認知症になって希望を失っている人に、希望を届けることです」。ある本人の力強い言葉だ。