読んでみた

私の記憶が確かなうちに−−「私は誰?」「私は私」から続く旅

クリスティーン・ブライデン著/本体2000円+税/クリエイツかもがわ(075・661・5741)

 46歳で認知症と診断されて22年。今も病気と向き合い、発信し続ける著者の最新刊。

 講演で世界中を飛び回り、「病人らしくない」と言われる理由の一つには認知症への偏見もあるが、著者の努力と工夫、社会変革への熱い思いが背景にある。本書は彼女の波乱の人生をたどりながら、絶望と再生の浮沈を赤裸々につづっていく。車やエスカレーターに乗っている際の周りの奇妙な見え方や、会話したくても外国にいるかのように言葉が出ない様子は「認知症の専門家」を名乗る著者ならではの描写で、具体的かつ胸に迫るエピソードだ。

 巻末の付録「よりよく生きるためのアドバイス」として紹介されている五つの心がけは、認知症予防に通じ、誰にでもすぐ参考になる。