読んでみた

認知症になった蛭子さん

蛭子能収著/光文社/税込み1320円

 テレビでおなじみ「おとぼけキャラ」の蛭子能収さんは初期の認知症で、アルツハイマー型とレビー小体型を併発している。しかし決してへこたれず、「いくつになってもお金を稼いでいたい」と固く決意している。そもそも若いころからモノを覚えるのは大の苦手。一方で競艇の選手名やレースの記憶は完璧で、そちらは大丈夫なのだそうだ。認知症になってもほとんど変わらないように見える。

 とはいえ、家ではいろいろ大変のようだ。夕方から夜に調子が悪くなる。夜間何回もトイレに起きるが、場所を忘れてうろうろしたり、幻視が起きたり。ときどきショートステイで宿泊するが本当は大嫌い。「(自分の家で)とにかくフツーに暮らしていたい」と思っている。

 妻の悠加さん、マネジャーの森永さん、担当記者の山内さんが語るのを読むと、蛭子さんが温かく支えられていることがわかる。『女性自身』連載の「ゆるゆる人生相談」はますます快調で、「回答は以前より鋭さ‥‥というより〝鈍さ〟が増した気がする」(山内さん)そうだ。

 問 中学生の娘がまったく本を読みません。/ 答 オレと一緒ですね。生まれてから読んだ冊数は1・5冊。本を読まないことで苦労したことはありません――といった具合。

  「ま、いいか」が口グセの蛭子さんのような生き方ができればと思わせるし、家族を気楽にさせるかもしれない本だ。