読んでみた

家族のための認知症ケア

繁田雅弘監修/NHK出版/税込み1210円

 認知症の人の行動や発言には理由がある。それを前提に、認知症の人とともに暮らすのに知っておきたいことを症状や状態別に挿絵を使って易しく紹介している。

 ないはずのものにおびえる人には共感を示しつつ「見えても大丈夫」と伝える。手をたたいたら消えた、など幻視を消す方法を見つけてもらうのもよい。夜、十分眠らない人は無理に寝かせようとせず、本人がつらくないならあまり気にしないことも大切という。

 時間や場所の認識に時間がかかる人には、「朝ごはんですよ」など時間や場所が分かるような声かけを。「今日は何月何日?」などと質問を続け、認識力を試すのはよくない。妄想で家族を責めてしまう人には、不安や戸惑いを受け止め、話を聞く。嫉妬妄想なら一緒に外出し安心感を与える。

 外出時の服選びなど生活面での工夫や、認知症に関する基礎的な医学情報も豊富。全編にわたって「認知症であることはいったん脇に置き、本来のその人とどう接するかだけを考えればいい」という監修者の信念が貫かれている。