読んでみた

いのちに寄り添う自宅介護マニュアル

やぎひろみ著/横山ふさ子絵/新曜社/税込み1980円

 どうすれば心のやすらぐ自宅介護ができるか。高齢の母を10年間介護した経験をもとに、実際に必要な技術を詳しく紹介してくれる。絵入りの説明は優しさにあふれ、しかも分かりやすい。

 「手すり」の話から始まる第1章は「住みやすい環境とからだの移動」。手すりの設置は介護保険を利用した工事の定番だが、実際には役に立たず無駄になったことが多いという。手すりを伝って歩くにはそれなりの力がいるし、取り付け位置によってはうまく使えない。著者が勧めるのは「つかまり歩き」「寄りかかり歩き」がしやすいように家具を配置し、必要なら固定すること。トイレなどでよく通る場所は、なるべく狭くしてつかまれる場所、寄りかかれる場所を確保すれば一人で行き来しやすくなる。

 こんな調子で「食べること」「おしっことお通じ」「おむつのお世話」「入浴と洗髪」「安眠対策」の各章でも詳細に技術的な説明をしてくれる。

 誰でも「便意があっても出にくい」といった状況はあるだろう。「お通じ」の項にある「便座体操」を試してみたら(評者の場合)効果はてきめんだった。介護に限らず、さまざまな場面に役に立つ知恵が詰まっている貴重な本だ。