読んでみた

在宅医療の真実

小豆畑丈夫著/光文社新書/税込み968円

 救急外科が専門の著者が、在宅医療に関わるようになった。そこで、さまざまな問題点を痛感するようになる。自身の経営する病院で「救急医療と在宅医療をミックスした診療」を始めた体験を踏まえ、一般向けに制度の仕組みや利用の仕方を紹介した本だ。

 救急と在宅というとまるで正反対の医療と思えるかもしれない。しかし実は重要な接点がある。在宅の中心は慢性期医療だが、ずっと慢性期にいるわけではない。急に高熱が出たり、おなかが痛くなったり、意識を失ったりと、急性期の症状に陥ることがしばしばあるからだ。そういうときにどうするかが重要だ。

 心配なのは「延命治療」と「救命治療」が混同されてしまうこと。在宅での治療を引っ張りすぎて病状を悪化させてしまう原因になりかねない。「延命」ではなくその後の人生を豊かにするための「救命」は、ためらわずに、というのが著者のモットーだ。そんな患者さんとして、93歳で腸閉塞(へいそく)の手術をした事例や、末期の大腸がんの患者さんに人工肛門を作り、がんも切除した事例などを紹介している。

 1人暮らしでも本人が望む場合は、在宅の方がうまくいくケースが多いという。重度訪問介護などの実例も紹介し在宅医療への希望を与えてくれる。