読んでみた

年寄りは集まって住め

川口雅裕著/幻冬舎ルネッサンス新書/税込み990円

 意外なことだが、日本を含めた多くの国では「高齢になるほど幸福感が高まっていく」という。平均的には50歳少し前で幸福感が最低となるが、そこから上がって行く人が多いのだそうだ。では、どうすれば幸福感の高い高齢期を過ごせるのか。約1万5000人の協力者から得たアンケートやインタビューをもとに探ったのがこの本だ。

 幸福になるためには価値観の変化が大きな要素だという。若いころ学んでいた絵を再開した女性は、昔は「評価されたい」と思っていたが、今は「自分が楽しい」へと変わったことが良かったと思っているそうだ。大学教授から介護系の仕事に転職した男性は、目の前にいる人の役に立つことに生きがいを再発見し、学生と接するより楽しんでいるという。

 高齢者は話が通じやすい同世代との交流を好むことが分かった。とすれば常に同世代の人と話ができる環境が望ましいことになる。そのような場では「親しい人からの情緒的サポートを得られる」。それは日本人の幸福感に必須の要素だという。「集合的幸福」、つまり個人の幸福が相互に影響し合い全体としていい状態になっていることだという。

 

 「年寄りは集まって住め」というのが本書の提言だが、高齢者の幸福について考える上で興味深い材料に満ちている。