読んでみた

よいケア文化の土壌をつくるVIPSですすめるパーソン・センタード・ケア

ドーン・ブルッカー、イザベル・レイサム著、水野裕監訳/クリエイツかもがわ/税込み2640円

 認知症の人を中心としたケアの理念「パーソン・センタード・ケア」研究の第一人者によるガイドブックの第2弾。研究で明らかになった、よいケア文化の特徴7項目を新たに示している。

 特徴の一つに、現場スタッフに一定の裁量権が与えられていることを挙げる。デイサービスを出て行こうとするSさん。スタッフは原因を探ろうとSさんの外出につきそい、街の花壇を気にかけているのに気付く。かつてSさんが市民農園に通っていたことを知り、デイで苗の世話をできるようにするとSさんは毎日、手袋と移植ごて持参でデイに来るようになった。スタッフに自由裁量がなければリスクをとれず工夫もできずにストレスをため、Sさんのよい状態も損なわれていたと指摘する。

 他にも▽目的を理解し、共有する▽組織のすべての人が1つのコミュニティーとして協力し合っている▽(刻々変わるケアを受ける側の望みや目標を踏まえた)スタッフの継続的でゆるやかな変化ーーなどを列挙している。