読んでみた

ヤングケアラー 介護する子どもたち

毎日新聞取材班/毎日新聞出版/税込み1760円

 祖父母や親きょうだいの介護に過剰な役割と責任を負わされ、学校生活だけでなく心身まで押しつぶされてしまう子どもたち。そんな社会に埋もれた「ヤングケアラー」の存在を世に知らしめ、国が全国調査に乗り出すきっかけをつくった毎日新聞の連載記事(新聞労連ジャーナリズム大賞・優秀賞)に加筆した一冊だ。

 初デート寸前に祖母が倒れ、失恋した中1男子。奔放な母の代わりに家事に追われる女子高生は、同級生に置き去りにされる焦燥感が募り家から逃げようとした。

 中学生時代、50代で前頭側頭型認知症になった母から毎日ののしられ、殴られた女性も。成人した彼女は「あの時、母を殺さなかった自分に感謝しています」と語った。

 ただ、本書はヤングケアラーを「かわいそうな子ども」としてのみ取り上げてはいない。家族への愛や諦念も交え丁寧に心情に迫った。彼らの半生を全否定せず、問題の複雑さをそっくり提示することを目指したからだ。

 取材の裏話をふんだんに盛り込んでいるのも特徴。