読んでみた

外国人介護士と働くための異文化理解

渡辺長編/大阪大学出版会/税込み3190円

 介護人材の不足が際立つなか、外国人介護士の受け入れは避けられない。が、文化の違いを踏まえなければトラブルにもなる。送り出し国の文化、死生観、介護に焦点を当て、外国人介護士と協働する術を平易に解説している。

 主要送り出し国の一つ、インドネシアでは上司にいいことしか報告しない傾向があるそうだ。ただし過失の隠蔽ではない。上下関係に厳しく、上司に敬意を払う文化が根付いており、問題が起きても上の期待に応えるために現場で解決しようとしがちだという。報告がないのを責めず、上司の方から「困りごとはないか」と常に話しかけるとよい。「どう教育するか」ではなく、受け入れる側が「どう変わるか」が大切となる。

 「予防支援」。自立を重視する日本式介護の理念の一つだ。しかし、中国人には「親不孝」に映る。食事やトイレもなるべく自分で、という日本式は「高齢者につらい思いをさせる」と否定的に捉えられる。ケアの仕方を指示する際は、なぜこうするのかも併せて伝えることが必要という。