読んでみた

介護に必要な医療と薬の全知識

長尾和宏、三好春樹編著/講談社/税込み1980円

 在宅医療、介護分野それぞれの第一人者による共著。ふんだんに盛り込まれた医療の知識を「老いや障害と共に生活する」ために応用するよう訴えている。著者曰く「介護職に向けた医学書」だが、豊富な図解で一般の人にも分かりやすい高齢者ケアの教科書となっている。

 病気の予防や体調不良・疾患ごとの個別の対応法、高齢者には慎重に使うべき薬から終末期の対応方法まで丁寧に紹介している。

 過剰を排した「高齢者医療」の確立を訴え、「ほぼ介護、たまに医療」のバランス感覚を求める。要介護者の疾患は加齢や体質と関係し、受け入れて付き合うことも必要という。薬にはやめ時があると説き、認知症への対応は医療より介護の役割と指摘している。

 本人が穏やかな死を望んでいるのに親族が濃厚な医療を要求し、「命が延びた分、苦しんだだけ」で亡くなる高齢者は多い。子どもが親の平穏死を邪魔するケースを「とても残念」に感じている。